2023 Fiscal Year Research-status Report
廃アスベストの再資源化:高機能性材料への新規転換プロセス開発
Project/Area Number |
20K05405
|
Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
本郷 照久 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (50434303)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | クリソタイル / 溶解 / 溶出 / バッチ式 / 流通式 / アモルファスシリカ / 不溶解残渣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アメリカ カリフォルニア州Coalinga鉱山から産出したクリソタイル(アスベストの一種)を用いて、溶解実験を行った。溶解実験はバッチ式と流通式で行い、クリソタイルから溶出するMg量およびSi量の経時変化や、溶解によるクリソタイルの形態変化を追跡することにより、クリソタイルの溶解機構を検討した。 溶解液にはpH2の硝酸水溶液を用い、37℃において最長で28日間の溶解実験を行った。バッチ式による溶解実験では、MgとSiの溶出速度が時間の経過と共に顕著に低下し、7日目以降ではMgとSiはほとんど溶出しなかった。溶解液のpHは、7日後に4.9まで上昇し、28日後には6.0に達した。このpHの上昇は、クリソタイルの八面体シートの溶解に伴って、OH-やMg2+イオンが溶出したことによるものである。溶解速度の低下は、pHの上昇によってもたらされたことが分かった。 流通式による溶解実験では、28日間を通してクリソタイルからMgやSiは溶出し続けた。溶解速度はSiに比べてMgの方が速く、不溶解残渣のSi含有率は時間の経過とともに高くなった。不溶解残渣のFT-IR測定から、クリソタイルが溶解することによって、アモルファスシリカが生成することが分かった。 不溶解残渣の電子顕微鏡観察により、溶解反応は繊維や繊維束の表面から進行していくことが分かった。また、溶解反応が進行することで、ナノ粒子が連結した繊維状のアモルファスシリカや、ロール構造がほぐれてシート状になったアモルファスシリカが形成されることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、アスベストの一種であるクリソタイルの溶解機構を検討することができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
アスベストから溶出したMgを原料に用いて水質浄化材料を合成するプロセスを確立し、その水質浄化能評価を行う。
|
Causes of Carryover |
本研究課題は、新型コロナウイルスに対する感染防止対策のため、最初の2年間は計画通りに研究を進めることができなかった。そのため、研究の遂行が予定よりも2年遅れた状況が続いており、次年度使用額が生じた。経費は物品の購入費として使用する予定である。
|