2021 Fiscal Year Research-status Report
軽油・重油へのファインバブル添加による燃費改善および排ガスクリーン化
Project/Area Number |
20K05409
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
中武 靖仁 久留米工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (30280481)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ファインバブル / ディーゼル機関 / 燃料消費率 / 有害排気ガス / 燃焼解析 / 燃焼促進 / 微粒化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ファインバブルを添加したディーゼル燃料の燃焼改善のメカニズムとしては,燃料がシリンダー内部へ噴射された直後,ファインバブルの再析出や膨張破裂により,噴霧燃料の微粒化の促進と混合気形成の向上を引き起こす.さらに,噴霧された液滴燃料表面の揺らぎを誘発し,伝熱・蒸発・燃焼の促進を引き起こす.結果として,着火性の向上,燃焼時間の短縮,燃えきり性の向上による燃費の低減,およびNOx,黒煙,PMの低減から排ガスクリーン化へつながるものと考えられる. しかしながら,大型船舶や火力発電所等の燃料であるC重油は,高温(150℃程度)・高圧(0.5 MPa程度)・高粘度(100cSt程度)という過酷な環境下で使用されている.ファインバブル添加の有利性を最大限に発揮させるためには,機関サイズやタイプの異なる各種ディーゼル機関に,最適な気泡径と気泡量にコントロールする必要がある. そこで本研究は,高温・高圧・高粘度な劣悪ディーゼル燃料中へのファインバブル添加技術開発と,それによる燃費改善と排ガスクリーン化を目的とした. 燃料はC重油を用い,燃料消費量1 L/min.に対して,空気混入量0.1,0.2,0.3,0.4 L/min.と変化させて,燃費と排ガスに及ぼすボイド率の影響について実験・検討を行った.空気混入量0.2 L/min.のときに,燃費が負荷平均5.7%,最大で7.2%低減され,スモークは最大52%低減された.燃料への空気混入量には最適値があり,空気混入量が少ないと燃料への混入気泡数自体が少なくなり,一方で多くなりすぎると気泡径が大きく,気泡数は少なくなり,燃費とスモークの低減効果が低下することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ファインバブル生成器ならびに大気泡の分級を含めた装置開発として,ループ式と加圧溶解式ファインバブル生成器について,操作条件(燃料/空気の圧力・流量)の及ぼす,ファインバブル特性(サイズ・量)への影響について,実験的に検討するために,循環式の実験装置を構築した.その結果,加圧溶解式よりループ式の方が,気泡径が小さく,気泡量が多いことがわかった.また,空気供給量が多いほど,燃料温度は低いほど気泡混入量が多くなることがわかった. 加圧・可視化燃焼性試験装置による燃費改善メカニズムの解明を目的に,試験装置の再検討を行った.結果として,加圧・可視化可能なバッチ式の試験装置では,ファインバブル燃料の供給再現性が困難であることから,現有装置の燃料配管系統,機関温度一定化などの改良を行うことで,精度の高い実験装置を設計,製作した. さらに,C重油を燃料とした,ベンチ機関(出力257 KW)性能実験を行った.空気混入量を変化させて燃費と排ガス(NOx,スモーク)を計測したところ,燃費は負荷平均で5.7%,最大で7.2%低減され,スモークは最大52%の低減が確認された.理由としては,シリンダー内の圧力計測から,燃料が噴射される直前にファインバブルの圧縮により噴射時期は遅れるが,その後の燃焼促進・燃焼時間の短縮が生じ,結果として熱発生率の増加により燃費が低減され,完全燃焼の促進によりスモークが低減されたことがわかった.また,空気混入量には最適値があることも分かった. 最後に,新型コロナの影響で,研究活動が制約され進捗がやや遅れた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において,ファインバブルを添加した燃料のディーゼル燃焼は,燃料噴射時期の遅れ,燃焼速度の向上,燃焼時間の短縮が確認された.そこで,より実験の精度と再現性を高く評価できるように,燃料の噴射圧力と噴射時期を任意に設定できる既存のコモンレール式試験装置の燃料配管の見直しやエンジン温度恒温化に改造した.本実験装置を用いて,ファインバブル添加燃料の燃費改善メカニズムの解明とさらなる燃費改善効果の向上に関する実験を遂行する. 次に,ディーゼル機関の燃費性能が改善されたメカニズムの詳細を探り,更なる性能改善に対する検討としてファインバブル内のガス種の影響について検討を行う.すなわち,ファインバブル添加による燃料の微粒化が原因なのか,ファインバブルとして添加した気体の拡散燃焼促進が原因なのかに対する検討を行う.添加気体としては,酸素,窒素や二酸化炭素とするが,重油焚きボイラー燃焼のカロリーアップとして期待される可燃成分である水素などについて検討を行う.
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Causes of Carryover |
設計,製作予定の加圧・可視化燃焼性試験装置では,ファインバブル燃料の評価が困難であることが判明したため,既存のコモンレール式試験装置の燃料配管系統やエンジン温度恒温化の改造を行った. 現在,燃料消費量の算出が電子天秤の重量変化を録画して行っているが,次年度は動力計ソフトを改良して直接,データを取得し,高精度化と手間の簡略化のために使用する.
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