2022 Fiscal Year Research-status Report
金ナノ粒子接合を利用した並列回路分子における軟X線誘起電子移動
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20K05420
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
和田 真一 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (60304391)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非接触導電性計測 / 内殻励起 / 共鳴オージェ電子分光 / Core-hole clock法 / 自己組織化単分子膜(SAM) / π共役 |
Outline of Annual Research Achievements |
軟X線を用いた内殻電子励起によって、原子レベルで局所的に電荷を発生させることができる。そしてその電荷の緩和は、オージェ崩壊の変化として計測できる。申請者は、このような内殻励起による反応ダイナミクスを解析することで、有機分子の導電性を評価し得ることを見出した。そこで本申請研究では、電極に接合した分子デバイスをモデル化した系として、末端に軟X線吸収部位をもつ芳香分子鎖チオール分子の自己組織化単分子膜(SAM)を作成し、内殻励起共鳴オージェ電子分光によるcore-hole clock(CHC)計測を用いた超高速電荷移動ダイナミクスの理解を目指している。そのために令和4年度は、芳香分子鎖の立体構造が異なるSAMを用いて、イオン脱離およびCHCの計測を実施した。 シリコン基板上に強固に吸着させた平坦な金表面を蒸着法で作成し、表面洗浄後直ぐにチオール分子溶液に浸すことで、均一で高密度に配向したSAM試料を作成した。本研究でこれまでに実施した様々な試行により、本作製手法を確立した。実験は高エネルギー加速器研究機構の放射光施設PFと広島大学のHiSORで実施した。先ずPFのハイブリッド運転で飛行時間型脱離イオン質量分析を実施することにより、修飾分子の末端最表面に位置するメチルエステル部位から脱離するCH3+イオンの断片化を調べた。ベンゼン環2つからなる芳香鎖でのねじれ度が異なる試料について、そのねじれ角に依存して断片化も異なることが分かり、芳香鎖の立体構造、すなわちπ共役性の変化によってイオン脱離のメカニズムが異なることが分かった。この違いはHiSOR BL-13で実施したオージェ電子分光計測によるCHC解析でも検証することができ、両手法から芳香鎖のねじれによって電荷移動速度の低下がみられることが分かった。このように放射光を用いた本計測手法で、π共役性に依存した電荷移動ダイナミクスを評価し得ることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの3年間では、芳香鎖が異なる数種類のSAM試料を作成し、イオン脱離反応計測および電子分光計測の実施を計画していた。 電子分光計測については、イオン化閾値前後でのπ*およびσ*内殻共鳴励起状態でオージェ電子分光計測を精密に行った。共鳴オージェ強度と正常オージェ強度の分岐比から電子移動速度を決定することができ、分子鎖の導電性の違いによる電子移動速度を系統的に考察することができ、おおむね予定通りに実施することができた。 一方イオン脱離計測については、高エネルギー加速器研究機構の放射光施設PFでの単パルス放射光による飛行時間型イオン質量分析(TOF)測定を必要とするが、単バンチ運転が実施されなくなったことから、パルスセレクターを併用したハイブリッド運転で計測実験を実施した。高強度アンジュレーター光の高速チョッピングによってパルス放射光を得ることができるようになったが、この光条件に合わせたTOF検出の調整に装置上の困難が生じたために研究の遅延が生じてしまった。またコロナ禍による共同研究体制に変化が生じたため、人的な遅延要因も生じた。その後の装置調整もあってこれら両課題は解決できる状況にある。 以上のことから、これまでの3年間で研究課題の多くが遂行できているが、少し遅延が生じている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に確認できたTOF計測システムの問題点の洗い出しから、令和5年度は改善の見込みが立っている。上述の通りに本研究課題の多くが遂行できており、電子分光計測に加えてイオン脱離計測も着実な計測が実施可能であると考えている。
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Causes of Carryover |
合成したナノ粒子のその場評価に可視吸収測定システムの導入を検討していたが、デモ機を使用した種々の調査・検討の結果、当初導入予定の該当機種の性能が利用条件を満たさないことが判明し、購入を見合わせる判断に至った。 またコロナ禍での学会開催の中止やオンライン化に伴い、当初に予定していた出張旅費の使用が大幅に減った。研究成果の公表の場として、今後の学会発表旅費として使用を予定している。
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[Journal Article] Ionization of Xenon Clusters by a Hard X-ray Laser Pulse2023
Author(s)
Kumagai Yoshiaki、Motomura Koji、Wada Shin-ichi、Iablonskyi Denys、Umemoto Takayuki、Nicolas Christophe、Miron Catalin、Togashi Tadashi、Ogawa Kanade、Owada Shigeki、Tono Kensuke、Yabashi Makina、Fukuzawa Hironobu、Nagaya Kiyonobu、Ueda Kiyoshi、他8名
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Journal Title
Applied Sciences
Volume: 13
Pages: 2176(1-21)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Time-resolved Coulomb explosion imaging of inner-shell excited state dynamics in CH2I2 and CH2BrI2022
Author(s)
M. E. Castellani, P. Bucksbaum, E. Jones, A. Howard, E. Kukk, Y. Kumagai, H. Lam, R. Minns, J. McManus, K. Nagaya, A. Niozu, J. Niskanen, Z. Phelps, W. Razmus, D. Rolles, A. Rudenko, J. Searles, A. Venkatachalam, K. Ueda, J. Unwin, S. Wada, T. Walmsley, E. Warne, F. Allum, M. Brouard, R. Forbes, 他12名
Organizer
Stereodynamics 2022 conference
Int'l Joint Research
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