2022 Fiscal Year Annual Research Report
量子力学的手法と分子動力学法を組み合わせた光化学反応経路を制御する動的因子の解析
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20K05423
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
松原 世明 神奈川大学, 理学部, 教授 (60239069)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分子動力学シミュレーション / 光反応経路 / 円錐交差 / 動的因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、光反応の有機材料や天然物合成などの分野への応用が活発になっている。このような光反応では、異なる電子状態間の円錐交差を経由して反応が進行する。そのため、円錐交差での経路選択が反応制御において重要である。これまで我々が熱反応制御において熱運動の動的因子が重要であることを明らかにしてきたように、円錐交差での経路選択においても動的因子が重要である可能性がある。本研究では、円錐交差での経路選択における動的因子を解析した。その結果、特に、次の2つの光異性化反応において意義ある結果が得られた。 1. ブタジエンのシス体の光異性化反応は、2つの円錐交差を経由して起こる。2つ目の円錐交差で分岐した幾つかの反応チャネルが存在し、種々の異性体がある一定の割合で生成する。その理由を解析した。全ての異性化生成物は、C-C-C-C二面角を変えながら生成するが、2つ目の円錐交差でのその角度は、熱揺らぎによりかなり大きな範囲で分布する。したがって、円錐交差でのC-C-C-C二面角の許容範囲が狭い生成物の生成割合は小さくなる。メチル置換基よって、C-C-C-C二面角の熱揺らぎをある生成物の許容範囲に限定すると、その生成物の割合が増加することがわかった。 2. アゾベンゼンのシス→トランス光異性化反応は、1つの円錐交差を経由して進行する。その量子収率は56%である。しかしながら、アゾベンゼンを架橋構造にすることで量子収率は80%にまで上昇する。つまり、円錐交差におけるトランス方向へのチャンネル選択率が上昇する。その理由を解析した結果、架橋構造にすることによって反応の自由度以外の振動自由度が減少し、反応の振動モードへのエネルギーの再分配の効率が上がり、円錐交差においてシス体に戻る経路よりもトランス体生成の経路をより効率的に選択するためであることがわかった。
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Research Products
(4 results)