2020 Fiscal Year Research-status Report
再散乱電子スペクトルの分子整列角依存性の測定とレーザー誘起電子回折
Project/Area Number |
20K05427
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
奥西 みさき 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80224161)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 再散乱電子分光 / 光励起分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は二酸化窒素分子の波長400nmのフェムト秒レーザー光照射により生成した光励起分子に高強度赤外レーザーパルスを集光し、トンネルイオン化により放出された光電子の再散乱電子スペクトルの励起光の偏光角依存性を測定した。実験は波長800nmパルス幅100fsのチタンサファイアレーザーの増幅光をビームスプリッターで分割し出力の10%を倍波結晶で400nmに波長変換しポンプ光として、真空中に導入した分子に照射し光励起を行った。残りの光を光パラメトリック増幅器で 赤外パルスに変換し、生成した波長1550nmシグナル光を励起分子にレンズで集光イオン化し、光電子放出を誘起した。ポンプ光の偏光方向をλ/2波長板で回転させながら、赤外光の偏光方向に放出されたカットオフ付近の光電子を観測することで再散乱電子の偏光方向依存性を測定した。この光励起の遷移双極子モーメントは分子のO-O軸方向を向いていることから、励起分子のO-O軸がポンプ光の偏光方向に主に整列された状態にある。従って再散乱電子の整列角依存性が測定できる。これを同じ条件下で測定した、全イオン収量の偏光角度依存性で規格化することで、電子・イオン微分散乱断面積の180度方向への後方散乱の分子配向角依存性の測定を試みた。本年度は特にこの実験の実現可能性を探る為にポンプ・プローブの遅延時間を生成イオンの収量が最大となる50-100fs付近に固定して測定を行い、光励起分子が緩和する前の状態からのイオン化による再散乱電子を測定した。これにより光励起分子の高エネルギーカットオフ再散乱電子の測定が実現可能であることを確かめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回我々が行った実験では、再散乱電子の衝突エネルギーは十数eV程度であり、従来基底状態の分子で行ってきた再散乱実験より遙かに小さく、電子回折を測定するには不十分であった。より高いエネルギーを得るためにはより強い光強度か、より長波長のレーザーパルスによるイオン化が必要である。残念ながら、今回行ったシグナル光領域の波長(<1600 nm)での光イオン化では、集光領域の励起分子の多くをイオン化しており、これ以上実効的に強度を大きく高めることは難しいことがわかった。従ってよりイオン化しにくいより長波長のアイドラー光のパルスを使う必要があると考えられるが、現在のレーザーシステムではアイドラー光の不安定性のため安定した測定ができていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
長波長の光パルスを導入するために必要な赤外用の窓板やレンズなどの光学部品を準備すると共に、ビームの安定性に欠けるアイドラー光でポンプ光とプローブ光の空間的オーバラップを取るためにプローブ光の光軸をロックするなどの工夫を行う。
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Causes of Carryover |
レーザーのパワーや安定度が低下したことおよび本年度の前半に学生が自宅待機になり、ほとんど実験が行えなかったことなどにより予定より研究計画に遅れが出たため。
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