2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K05429
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
神谷 宗明 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (20509260)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非断熱ダイナミクス / TDDFT / 非断熱カップリング / 密度汎関数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
非断熱励起状態で重要となる、非断熱カップリングベクトルを求める方法としては数値微分による方法と、解析的な方法が考えられるが、解析的な方法ではその精度やベクトルを求める場合には数値的には3N回の数値微分が必要なのに解析的には一回で済むことによる速度的なメリットがある。 そこで本年度は、解析的な非断熱カップリングの開発として、閉殻、開殻TDDFT/TDA法に対する非断熱カップリングベクトルに加えて、スピン反転TDDFT/TDA法に対しても、解析的なエネルギー勾配と非断熱カップリングベクトルについてNTChemに並列実装を行った。ここで、スピン反転TDDFT/TDA法は例えば閉殻系では3重項状態で参照状態の計算を行ったのち、TDDFT/TDA計算において通常の励起では禁制であるスピンがα→βという励起を計算することにより、一重項状態の基底状態や励起状態を求める方法である。 数値微分による非断熱カップリング計算法では、これまで、波動関数の数値微分を、軌道係数の微分により行っていたが、各軌道の位相の自由度があるため、特にCI係数の微分を分子動力学の各点で安定的に実行するのは難しく、さらに相対論効果を取り入れることによって得られる複素数の波動関数ではさらに難しくなるという問題があった。そこで本年度は、波動関数そのものではなく、電子密度の形で遷移電子密度を用いた表式を再導出をおこない、新たにNTChemに並列実装を行った。この新しい定式では原子軌道表式の電子密度、遷移電子密度、重なり行列のみで表されており、原子軌道表式で解析的な実装式と等価なので比較することにより、従来実装が難しかった並進対称性が崩れる項(electron translation factors : ETF)を補正した非断熱カップリングを実装することができ、解析的な非断熱カップリングの値と直接比較ができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、近年さまざまな応用が期待され急速な進歩がもたらされている光機能性材料に対して、素子内の励起状態間遷移、項間交差を適切に記述、再現できる理論を目指し、電子状態理論からの方法論開発を行っている。昨年に引き続き研究を継続したが、今年度は特に計画にある励起状態間遷移を記述する時間依存密度汎関数法(TDDFT)における非断熱カップリングの導出を行い、NTChemに並列実装に取り組むことができた。またこれを分子動力学法のプログラムと併用することでTDDFT法による非断熱分子動力学シミュレーションを実装することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、励起状態間の遷移の詳細な解析に向けた電子状態理論の開発、 相対論的非断熱分子動力学プログラムの開発を行っていく予定である。 これまでに非相対論に対してはほぼ整備が終わったので、相対論効果を取り入れた大規模系に向けた相対論的時間依存密度汎関数法の開発、プログラムの改良を継続的に行いつつ、スピン軌道相互作用結合状態におけるエネルギー勾 配と非断熱結合を計算するプログラムの開発をおこなう予定である。 これまでに購入したコンピュータをこれらの並列プログラムの開発に用いる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度海外で開催される国際学会での発表を予定していたが、本務において外せない業務と重なってしまい参加が不可能になったことと、近年の海外情勢による航空運賃、滞在費の高騰や治安状況を鑑みて、来年度国際学会にて発表を行うこととした。また、その準備に必要なPC等について先に準備することとした。
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