2023 Fiscal Year Annual Research Report
Verification of the hydrophobic interaction hypothesis in protein structural stability and theoretical/experimental study on cosolvent effects
Project/Area Number |
20K05431
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
墨 智成 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (40345955)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | タンパク質 / 疎水性相互作用 / 水和効果 / 分子内直接相互作用 / 共溶媒効果 / アルコール / 尿素 / 選択的溶媒和 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,大きく分けて二つの研究目的を掲げている。一つは水中でのタンパク質の天然構造安定性における水和効果の解明,もう一つはアルコールおよび尿素などの変性剤によるタンパク質構造安定性に対する共溶媒効果のメカニズムの解明である。 前者では,私共が開発した密度汎関数理論に基づく溶媒和自由エネルギー計算手法を駆使して,モデルタンパク質GCN4-p1の天然および変性構造に対する水和の寄与を解析した。その結果,水は疎水基を嫌っておらず,変性に伴う疎水基の水への露出を好み,アンフォールド構造の安定化を導くことが明らかとなった。すなわち,タンパク質の天然構造安定性はタンパク質分子内相互作用に起因しており,水和はその不安定化により天然構造の柔軟性を導いていることが明らかとなった。本研究による結論は,長年信じられてきたKauzmannによる疎水性相互作用仮説,すなわち水が疎水基を嫌うことによる「疎水効果」がタンパク質の構造安定性に主要な役割を果たすという古典的学説に対する再検討を示唆している。 後者では,私共が先行研究において,トリフルオロエタノール(TFE)によるタンパク質のヘリックス誘導に関する実験データの分析に適用した熱力学的恒等式を,GCN4-p1の分子動力学シミュレーションのデータ分析に適用した。それにより,TFEと尿素による相反する共溶媒効果,すなわちTFEによるヘリックス安定化並びに尿素によるコイル誘導に関する分子機構を,選択的溶媒和に基づいて解析した。その結果,TFEは側鎖と強く静電相互作用することにより,ヘリックスへの選択的溶媒和を強めてその安定化を導き,尿素は主鎖との相互作用によりコイルへの選択的溶媒和を強めてその安定化を導くことが明らかとなった。 今年度は本成果をアメリカタンパク質科学会誌Protein Scienceにオープンアクセス掲載し,プレスリリース発表も行った。
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