2022 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of chemical reaction pathways by local excitation with buffer gas cooling
Project/Area Number |
20K05432
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高口 博志 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (40311188)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 化学反応ダイナミクス / 量子状態依存性 / 衝突エネルギー依存性 / ヒドリド移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、状態選別したNO分子イオンと炭化水素分子との反応に対して、反応断面積の量子状態依存性を考察するための実験および装置開発を進めた。振動励起したNO+(v=1)とイソペンタン(iso-C5H12)との反応実験では、振動励起により信号強度が低下する結果が得られた。振動基底状態のNO+(v=0)の反応実験では、衝突エネルギー依存性を測定して、低衝突エネルギーほど反応断面積が増大する結果を得た。後者は多くのイオン・分子反応が示す傾向を再現した結果であり、前者は量子状態依存性に対する新しい知見である。レーザー分光法による振動励起については、付与されるエネルギーは精密に規定されるが、並進エネルギーについては反応分子の速度広がり、特に分子イオン輸送制御の精度が、定量的な考察に制限を与えた。イオン経路に対する数値シミュレーションに依存する衝突エネルギー幅の評価により比較的大きな誤差を含むものの、得られた測定結果の解析により、分子振動励起は同じエネルギー量を衝突エネルギーとして与えたときに比べて、著しく反応性を低下させることを明らかにした。一方で、反応系の自由度をより定量的に分割して、反応経路を実験的に同定するためには、光イオン化後のイオン並進エネルギーの高分解能化が必要であるといった課題が明確となった。 本研究課題は、低衝突エネルギー反応条件で顕著になる、反応対の並進自由度と反応分子の振動自由度の化学反応性に対する役割を実験的に分割することを目標として取り組んだ。研究期間全体を通じて光生成した分子イオンの低速制御を改良して、量子状態依存性・衝突エネルギー依存性の相関を観測するに至った。対象とした非プロトン性イオンと炭化水素分子とのヒドリド移動は、その反応機構が詳細には解明されていなかったが、本研究課題では、反応ダイナミクス研究による分子論的理解につながる成果へと結びつけた。
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