2021 Fiscal Year Research-status Report
Infrared emission mechanism of fullerene C60 and its cosmic abundance
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20K05438
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
若林 知成 近畿大学, 理工学部, 教授 (30273428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑中 美穂 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (80616011)
兒玉 健 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20285092)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フラーレン / 赤外発光 / 宇宙存在度 / 振動分光 / ポリイン |
Outline of Annual Research Achievements |
フラーレンC60の赤外発光スペクトルの測定に成功したので、フラーレンC70についても同様の測定を行った。その結果、C60の4つの許容遷移とは異なる赤外発光線を多数確認することができた。C60が正二十面体点群Ihに属する高い対称性を持つのに対し、C70はD5hというより対称性の低い点群に属するため、赤外許容となる振動モードの数がより多くなることを、赤外発光スペクトルによって実証することができた。理論的に予想される赤外活性モードでは説明できない発光線も複数観測され、これらは2量子励起による倍音や2つ以上の振動モードが同時励起される結合音によるものと考えられる。 星間空間における化学反応によってフラーレンC60やC70が生成すると考えられるが、その前駆体としても関心がもたれる炭素鎖分子ポリインについてもその分光学的研究において成果があった。具体的には、反応性の高いsp混成炭素鎖の両端を水素で安定化した水素終端ポリイン分子C2nH2 (n=4-6)について、サイズごとに分離精製した試料を用いてリン光スペクトルの測定に成功した。重合による変質を避け、ヘキサン溶液を真空中で20ケルビンに冷却した銅基板に吹き付けてポリイン分子ごと固化した。この低温マトリックス試料に対して213 nmから409 nmの範囲で波長可変なパルスレーザー光を照射し、試料表面の発光を分光器で測定した。その結果、数ミリ秒から十数ミリ秒の寿命をもつ発光バンドを検出することができ、ポリイン分子のリン光に帰属した。リン光スペクトルに現れる振動構造から、電子基底状態におけるいくつかの振動モードについて帰属をすることができた。過去に報告したシアノポリイン分子HC2n+1N (n=4-6のリン光スペクトルとあわせて、ポリイン分子の特徴を総合報告にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フラーレンC60の発光スペクトルについては振動モードの帰属が進み、次の段階として赤外発光バンドの誘導放出に関する実験的研究に着手した。振動励起用の光源として量子カスケードレーザーを購入して準備を進めている。室温以下の測定において、フーリエ変換後のスペクトルに負の発光が現れる点に関して、検出器を冷却するなどの措置が必要であることがわかったため、次年度にこうした新たな課題に対処していく。
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Strategy for Future Research Activity |
C60分子の特定の振動モードを選択的に励起することによって、分子内の振動エネルギーがどのように拡散し、分配されるのか、その過程を調べるための実験を計画し、準備している。量子カスケードレーザーを安定的に動作させることは当該実験を遂行するうえで重要である。レーザーの電流制御と温度管理を行うためのホルダーと電源回路を準備し、光源の安定性を確認する。さらに、C60ペレットの作製法にも改良を重ね、分子の振動励起のモデル化が容易な実験条件の実現に努める。これにより、フラーレンC60の赤外発光強度に関して理解を深める。
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Causes of Carryover |
実験材料等の購入に代金の不足が見込まれるため次年度に繰り越して購入することにした。
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[Journal Article] Phosphorescence of hydrogen-capped linear polyyne molecules C8H2, C10H2 and C12H2 in solid hexane matrices at 20 K2022
Author(s)
Tomonari Wakabayashi, Urszula Szczepaniak, Kaito Tanaka, Satomi Saito, Keisuke Fukumoto, Riku Ohnishi, Kazunori Ozaki, Taro Yamamoto, Hal Suzuki, Jean-Claude Guillemin, Haruo Shiromaru, Takeshi Kodama, Miho Hatanaka
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Journal Title
Photochem
Volume: 2
Pages: 181 - 201
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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