2020 Fiscal Year Research-status Report
クラスレートハイドレートの安定・準安定構造の三次元挙動解析
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20K05440
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
竹谷 敏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 上級主任研究員 (40357421)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | TBAB / セミクラスレート / ガスハイドレート / 構造解析 / X線CT |
Outline of Annual Research Achievements |
クラスレートハイドレートを溶液中で生成すると、シャーベット状のハイドレート結晶を含有するスラリーとなる。この時、生成条件によっては、安定なハイドレート構造と準安定な構造が共存することが報告されている。しかし、「なぜハイドレートの準安定相が形成されるのか?」については謎である。ハイドレートの結晶構造が変化すると、熱物性や力学特性なども変化する。装置冷却部への結晶凝集や、凝集にともなう配管の閉塞、ハイドレート結晶と液相との分離などの技術課題の解決に向け、準安定相の形成メカニズムの理解は重要である。本研究では、セミクラスレートハイドレートの一つであるTBABハイドレートを主な研究対象に、溶液中で生成したハイドレート凝集体の非破壊X線CT測定を実施する。複数の結晶相が共存する生成条件を調べ、マクロスケールでの「ハイドレートの三次元分布の可視化を実現」、「準安定相の発現のメカニズムの解明」を研究の目的としている。 単結晶X線構造解析の結晶構造データをもとに、結晶構造が既知の水和数38のTBABハイドレートの結晶構造データを用い、粉末XRDで単位胞サイズの温度変化から、TBABハイドレートの密度値とその温度変化を明らかにした。 さらに、35keVの放射光単色X線を用いることにより、吸収コントラストX線CTで氷と共存するTBABハイドレートの非破壊観察が可能であることを示すことができた。これらの結果を、研究論文にまとめ公表した。 また、位相コントラストX線CT画像より、TBABハイドレートの生成条件と安定なハイドレート、および準安定なハイドレートの空間分布を明らかにするため、低温型位相コントラストX線CT測定法を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物質の密度は、物性値の中でも非常に基本的な値であるにもかかわらず、クラスレートハイドレートの密度に関する報告例は非常に少ない。これはハイドレート生成時に余剰水として残った水(および氷)がほぼ必ず存在しており、純粋なハイドレート結晶のみを取り出して分析することができないためである。単結晶X線構造解析の結晶構造データをもとに、いくつかのハイドレートの密度が報告されているが、ハイドレート結晶が安定な低温域(< -100℃)での値に限られていた。 本研究では、結晶構造が既知の水和数38のTBABハイドレートの結晶構造データを用い、粉末XRDで単位胞サイズの温度変化から、TBABハイドレートの密度値とその温度変化を明らかにした。 メタンハイドレートに代表されるようなガスハイドレートは、氷や水との密度の差が極僅かである。このため、これまではX線CT測定により、ガスハイドレートと、水や氷との識別はされてこなかった。本研究では、35keVの放射光単色X線を用いることにより、吸収コントラストX線CTで、氷と共存するTBABハイドレートの非破壊観察が可能であることを示すことができた。これらの結果を、研究論文にまとめ公表した。位相コントラストX線CT画像より、TBABハイドレートの生成条件と安定なハイドレート、および準安定なハイドレートの空間分布を明らかにするため、低温型位相コントラストX線CT測定法を試みた。TBABハイドレート試料内の高感度な非破壊三次元測定の予備測定を実施した。その結果から、0℃以下およびTBABハイドレートの融点近傍の温度(~10℃)でのX線CT測定により、X線CT測定による三次元密度分布解析の可能性について検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、結晶構造が既知の水和数38のTBABハイドレートの結晶構造データを用い、粉末XRDで単位胞サイズの温度変化から、X線CT測定の温度条件下でのTBABハイドレートの密度を明らかにした。 今年度の研究では、求めたTBABハイドレートの密度と氷結晶の密度とを基準値とすることにより、X線CT測定による三次元密度分布解析に着手する。X線CT画像による三次元解析により、TBABハイドレート結晶の水和数の異なる結晶相の分布の可視化、および三次元密度解析を行う。 得られた結果に基づき、準安定相の出現の要因を抽出する。さらに、X線CT画像から求まる準安定相の密度と粉末XRDにより求まる結晶構造情報から、準安定相の結晶構造を検討する。また、準安定相の出現を支配する因子を特定し、TBABハイドレートの準安定相の出現メカニズムについて考察する予定である。
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Causes of Carryover |
学会の現地開催が中止となったため、研究開始前に予定した旅費が不要となったため。
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Research Products
(5 results)