2021 Fiscal Year Research-status Report
New method for characterization of plastic crystals using terahertz spectroscopy
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20K05443
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
丹野 剛紀 秋田大学, 地方創生センター, 准教授 (70390721)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | テラヘルツ分光 / 柔粘性結晶 / 相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度の研究で絞りこんだうち一種類の柔粘性結晶について,故意に欠陥を導入するため,マトリクス分子に構造が近い分子を添加し固溶体を形成した.すると,不純物分子の添加濃度に応じて,得られる針状結晶の形状(アスペクト比)が連続的に変化した.この固溶体のテラヘルツ分光スペクトルを詳細に調査したところ,マトリクス分子の分子内振動,マトリクス分子の秤動振動(推定),不純物分子の分子内振動のそれぞれに帰属される3つの振動モードが1~6 THzの範囲で観測され,それらのピーク強度やピーク周波数が不純物濃度に対して連続的に変化する現象が観測された.分子内振動に帰属すると考えられたモードについては,Gaussianによる量子化学計算の結果でも合理的に説明できる結果が得られた.また,この系では,結晶の秩序-無秩序相転移が,不純物濃度がモル分率で0.5を超えても発現した. 不純物分子をの種類を変えた場合についても検討を始めており,不純物分子の極性の強い基が結晶全体の相転移挙動に及ぼす影響を整理している.一般的に,マトリクス分子同士の相互作用が弱いがゆえに柔粘性結晶としての性質を示しているのであるから,マトリクス分子よりもいくらか極性の強い不純物分子が加われば無秩序相に転移しづらくなって,相転移温度が高くなることは容易に予測されるところである.このような観点に立ち,不純物の種類と濃度と相転移温度の相関を体系的に調べている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検討すべき柔粘性結晶とそれに加える欠陥(不純物)が絞られ、その系に対して集中的に実験を行ったことから、パンデミックによる遅延を挽回できた。
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Strategy for Future Research Activity |
二元系の柔粘性結晶について、ゲスト分子の官能基や濃度と相転移温度の相関を体系的に計測するとともに、振動数への影響についても検討する.他方、量子化学計算を援用し、各テラヘルツ振動の帰属をつまびらかにし、柔粘性結晶の欠陥が結晶全体の相転移挙動に与える影響を明らかにする.また,分子間振動に帰属されたモードの具体像を解明する。 また,不純物以外の格子欠陥へも視野を拡げ,それらが相転移の与える影響について,主にテラヘルツ分光を用いて研究を展開する.
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Causes of Carryover |
パンデミックにより学会旅費の支出が無くなった。故障したワークステーション(量子化学計算に使用)の更新,融点測定装置などに使う。
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