2021 Fiscal Year Research-status Report
電流計測と表面増強ラマン計測に基づく単分子計測法の開拓
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20K05445
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金子 哲 東京工業大学, 理学院, 助教 (10738537)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 単分子接合 / 表面増強ラマン散乱 / 電気化学 / 電流計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では表面増強ラマン散乱(SERS)スペクトルと単分子電流計測の融合により,電子輸送特性と振動分光による分子認識法の開発を目的としている.2年目あたる本年度は初年度に見出したC60の構造変化についてスペクトル変化の観点から詳細に解析を行い、電極電位を精密に規定するための電気化学電位制御機構を構築した.C60分子についての知見について以下に述べる. C60分子接合は微細加工により作製した金のナノ電極構造を用い,室温大気中においてMechanically controllable break junction(MCBJ)法により作製を試みた.本研究では電極上に分子を吸着させた状態で電極を破断させ,分子接合の電気伝導度に対応する数 mG0(G0は77.5 μSに対応する)の電気伝導度を示した状態でSERS計測を行った.振動エネルギーについて詳細に解析した結果,金電極との相互作用の強さ起因してC60分子の振動エネルギーが変化する事が示唆された.また分子接合中ではバルク状態では観測されない,振動モードも観測された.これらの振動モードの観測の有無や強度は接合によって異なっていた.電流-電圧曲線の解析から得られる金属-分子間相互作用の大きさに注目して解析をすると金属-分子間相互作用が大きいほど,分子接合に固有な振動モードが観測される頻度が多いことが分かった.以上の振動モードの観測頻度の上昇は吸着構造に依存した電荷移動効果の変化に由来していると考えられ,電荷移動効果に由来したSERSの強度変化について知見を得ることができた. 電気化学電位を制御したSERS計測に向け,バイポテンショスタットを用いた電気化学計測機構を構築した.メチルビオロゲンにより計測系の試験を行い,金表面に吸着した分子の酸化還元反応が観測できていることを確認し,分子接合系へと計測を発展させている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述した通り,分子接合で観測される振動モードについて金属-分子間相互作用の観点から一定の知見を得ることができた.相互作用に依存したSERSスペクトルの観測についてナフタレン分子等,種々の分子接合に展開しており,分子の配向や相互作用の強さ等の影響が明らかになりつつある. また電気化学電位を制御した分子接合のSERSスペクトル計測に向けて,MCBJ電極の形状や電極の表面処理方法についての検討を行った.特に基板の絶縁処理方法について注力し,フォトレジストを用いる事で比較的少ない工程数で電気化学電流の影響を抑止することができた.続いて電極電位を制御するための計測システムを整備し,現状では化学的な環境を制御した状態で,分子接合系におけるSERS計測を行う環境が整いつつある.一方,電圧印加時においても分子接合形成時では分子接合の構造の揺らぎが大きく,それに伴いSERSスペクトルと電流信号が揺らぐため,構造の特定が困難という課題が未だ存在する.この課題に対しては統計的なスペクトル解析手法を用い,スペクトルの同定を試みている.また,電気化学電位を変調させた際に,電圧に応じた特定の振動モードのピーク強度の増減が観測されており,分子接合において電極電位と対応したSERSスペクトルの挙動の端緒が観測されている. 以上の通り環境及び電子状態を規定した分子接合の振動スペクトル観測が行えつつあるため,おおむね順調に研究が進行しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では化学的環境や電気化学電位を規定した分子接合におけるSERSスペクトルの取得を目指している.これまでの研究成果から,金属-分子間相互作用を変化させた際のスペクトルの挙動が明らかになりつつあり,電極電位を制御した分子接合のSERS計測を行うための環境を整備することができた.本年度は電気化学電位を制御による分子配向の制御に注力し,分子配向によるSERSスペクトル変化を明らかにする.また、同一分子による配向変化や相互作用変化に由来したスペクトル形状の変化のデータをもとに統計的な手法による標的分子に由来したスペクトルの認識を行い,ナノギャップ中に補足された分子の振動スペクトルの特定を行う.
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度は電圧印加システム改良を行うための物品の購入伴い、サンプル作製に必要な微細加工用の金属材料や試薬購入に必要な経費に不足分を補填するために前倒し申請を行ったが、システムに用いる部品を作製過程を工夫したことにより、試薬購入に充足する予定の経費を節約することができたため。 (使用計画) 基板作製のための化学薬品を購入する。
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Research Products
(12 results)