2022 Fiscal Year Annual Research Report
電流計測と表面増強ラマン計測に基づく単分子計測法の開拓
Project/Area Number |
20K05445
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金子 哲 東京工業大学, 理学院, 助教 (10738537)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 単分子接合 / 表面増強ラマン散乱 / 電流-電圧特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では表面増強ラマン散乱(SERS)スペクトルと単分子電流計測の融合により,電子輸送特性と振動分光による分子認識法の開発を目的としている.最終年度に当たる本年度は、前年度に引き続き電子状態を規定させたSERSスペクトルの単分子計測を行った。これまで取り組んだフラーレンをはじめ、種々の分子を用いた分子接合の作製を行い、SERSと電流-電圧計測による単分子接合の電子状態解析を行うことで、金属-分子間の相互作用の増大によりSERS強度が増加する傾向にあることを見出した。また、分子認識法の開発に向けπ-π相互作用に着目し、ナフタレン分子接合の構造解析に関して一定の成果を得たため、以下に詳細を述べる。 チオール基が片側のみに吸着した2-Naphthalenethiol(NT)を用いてπ相互作用を介した二量体の構造解析を試みた。単分子接合はMechanically controllable break junction(MCBJ)法を活用して作製した。NT分子の自己組織化膜を金電極上に作製した後、機械的な電極の破断により形成されるナノギャップに分子を架橋させ、単分子接合を作製した。破断過程における電気伝導度の分布を調べたところ、1 mG0 (G0:2e^2/h)近傍に幅広い分布を持つことが分かった。更に詳細な構造を調べるため、接合構造を保持し、分子接合の電気伝導度とSERSを同時に計測した。特に大きな信号強度が得られた環呼吸モードをマーカーとして、振動エネルギーの電気伝導度依存性を調べたところ、3種類の準安定構造を識別することができた。量子科学計算による振動エネルギーの比較と透過率計算と比較検討を行うことにより、それぞれの状態がπ-π相互作用と結合性が異なる二つの金属-π相互作用を介した結合に由来していることが明らかとなり、π―π相互作用を介した単一二量体の認識に成功した。
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