2021 Fiscal Year Research-status Report
Ultrafast photoexcited dynamics of Cu(I) complexes with thermally activated delayed fluorescence in solid-state thin layers
Project/Area Number |
20K05446
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
野崎 浩一 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (20212128)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蛍光アップコンバージョン / ハロゲン架橋銅二核錯体 / エキシマー形成ダイナミクス / 固体薄膜 / 励起緩和ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
拡散反射法による時間分解分光測定では、粉末試料中への励起光の侵入深さに分布が生じるため高い時間分解能を得ることが難しいことから、本研究では固体試料をガラス基板上に薄膜化して透過法で測定する蛍光アップコンバージョン装置を開発した。本装置の応答関数はほぼ励起レーザーパルス幅に近い約100フェムト秒であり、固体中での励起緩和ダイナミクスを数10フェムト秒の時間分解能で観測することが可能になった。さらに、薄膜試料の高速回転や励起光照射時間を最小限にする工夫をして、試料の光劣化による測定データの影響を最小化した。 ハロゲン架橋銅(I)二核錯体はハロゲン-配位子間電荷移動状態(XLCT)や金属―配位子間電荷移動状態(MLCT)から強い熱活性遅延蛍光を示す。XLCT励起状態では大きな構造緩和が起きないのに対し、MLCTにおいては銅イオンの配位構造が四面体構造から平面構造へ変化し、発光がレッドシフトする。[Cu(μ-I)dppb]2の時間分解発光寿命の解析およびDFTによる理論計算により、励起直後、数100フェムト秒の内部変換によってXLCTが生成し、項間交差の後構造変化を伴ってMLCTに緩和することが明らかになった。MLCTへの緩和速度は溶液中、結晶中、薄膜中など環境の剛性に強く依存し、X原子の種類にも依存することが分かった。 高い発光量子収率を示すことでよく研究されているビピリジル架橋の配位高分子型のハロゲン架橋銅(I)二核錯体について時間分解発光寿命を解析して項間交差の速度を初めて決定した。 さらに固体薄膜中で起きる高速なエキシトン移動速度を決定するため、既存の時間相関単一光子計測装置を改良して、ピコ秒時間分解蛍光異方性測定装置を開発した。本装置を用いて、有機ポリマー薄膜中に分散したペリレンのエキシトン移動速度が膜厚に依存することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
薄膜用フェムト秒蛍光アップコンバージョン測定装置についてはほぼ完成したが、時間分解発光スペクトルを自動的に測定するための装置調整に少し時間がかかっている。 ハロゲン架橋銅(I)二核錯体でのXLCTからMLCTへの緩和速度は、環境だけでなくX原子にも依存することが示唆され、現在X依存性について検討を行っている。他のハロゲン架橋銅(I)二核錯体について励起緩和ダイナミクスを測定する予定であるが、難溶性である試料の薄膜作成の一般的な方法をまだ確立できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ハロゲン架橋銅二核錯体は配位高分子型のものが多く、それらのほとんどは沸点が高く難溶性であるため、蒸着法やスピンコート法で薄膜作製するのが難しい。本研究で検討しているフェムト秒時間分解発光測定を行うためには、このような試料を薄膜にする一般的な方法を確立する必要がある。今後、ナノ粒子化して塗布膜を作成するなどの方法を検討する。
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Research Products
(5 results)