2023 Fiscal Year Research-status Report
水溶性デンドリマーのワンポット大量合成およびUV硬化型分子カプセルへの応用
Project/Area Number |
20K05451
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
青木 健一 東京理科大学, 理学部第二部化学科, 教授 (40385943)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | デンドリマー / クリック反応 / 分子カプセル / 分子包接 / 光架橋 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度までに、当研究室で提案しているダブルクリック反応を用いたデンドリマー世代拡張反応の精度を向上させることができ、デンドリマーの純度と単分散性をより高めることができた。これにより、骨格母体である高純度の32末端ポリアクリレートデンドリマーを大量合成できるようになったため2023年度は以下の検討を行った。
(1)Ac32の末端にアミノ基を導入することにより、アミン塩酸塩を末端に有するデンドリマー(DNH4Cl-32)を合成できた。DNH4Cl-32は、純水および酸性水溶液に10wt%以上の濃度で溶解し、本デンドリマーの内部にライハルト色素などの疎水性ゲスト分子を包接可能であることが分かった。動的光散乱測定、NMR測定(DOSY, 2D-NOESY測定など)により、包接時の分子集合状態や包接構造に関する知見を得た。 (2)Ac32の末端にカルボン酸やスルホン酸のナトリウム塩を導入できることも見出した。これらのデンドリマーは純水および塩基性水溶液に高い溶解性を示し、 DNH4Cl-32と同様に分子包接能を示すことを突き止め、現在、詳細な検討を行っている。 (3)Ac32の末端に光反応性部位として、ケイ皮酸部位を導入できることを見出した。本誘導体は塗膜中で光二量化反応を起こすことから、光照射によりデンドリマーどうしが架橋し、ネットワーク構造を形成する。そのため、光照射により水や有機溶媒に不溶性の光硬化デンドリマー塗膜を得ることができた。現在、(1)、(2)の水溶性デンドリマーに光架橋性を付与した新規デンドリマーの合成を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は2020年度から開始しているが、最初の2年間は新型コロナ感染予防対策の影響を受け、実験の進捗が予定よりやや遅れたことに加え、多くの学会の開催が中止されたことにより、成果の対外的発表が十分に行われていない。昨年度は、ほぼ2020年度以前の実験時間を確保でき、実験成果が出始めてきたが、まだ学術論文として投稿するレベルまでまとまっていない状況である。 以上より、本研究課題の研究課題の進捗状況は、当初の予定よりやや遅れていると考えており、その解決策として、本研究課題の実施期間を1年延長申請し、今年度(2024年度)を目途に、一定のレベルまで成果がまとまることを目指し、研究を続ける予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、当初、昨年度(2023年度)で終了予定であったが、上記の理由により1年間延長し、遅れた部分の研究と成果報告に向けた準備を進めている。今年度は、主に以下の点に重点を置き、研究と成果報告を行う予定である。
(1)これまでに得られている水溶性デンドリマーの、水系での分子包接挙動を詳細に調べる。 (2)これまでに得られている各種水溶性デンドリマーの世代を拡張し、末端数を32から64まで増加させる。末端数の増加が、分子包接挙動にどのように影響するかを詳細に調べる。 (3)昨年度、合成に成功した末端にケイ皮酸を有するデンドリマーについて、それらの光反応特性を詳細に調査する。 (4)水系で疎水性ゲスト分子を包接可能で、光架橋性も有するデンドリマーを合成することにより、水系で光硬化膜を得る手法、および疎水性ゲスト分子を塗膜内に固定化する手法を構築する。
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Causes of Carryover |
本研究課題は2020年度から開始したが、最初の2年間は新型コロナ感染拡大防止の観点から、実験時間が十分にとれなかったことに加え、対面による学会活動が制限され、成果報告の機会も十分ではなかった。そのため、本研究課題の遂行期間を1年間延長し、今年度も研究を続けることにより、研究成果を系統的にまとめ、対外的な成果報告を行う予定である。 今年度は当初予定していなかった延長期間に当たり、そのために必要な研究費(主に消耗品購入費)と対外的な成果報告に係る費用として、研究費の一部(約25万円)を今年度に繰り越すこととした。
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