2021 Fiscal Year Research-status Report
含白金共役系ポリマー配向膜のアップコンバージョン特性
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20K05455
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
溝黒 登志子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (90358101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三田 文雄 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (70262318)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 含白金共役系ポリマー / 光アップコンバージョン / 薄膜 / 配向 / 三重項励起子 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体系の光アップコンバージョン(UC)材料は、溶液とは異なって三重項励起子の拡散に異方性を持たせることが可能であり、励起子密度の低下を防ぎながらそれを伝達することでUC効率の向上が期待される。しかし、これら固体内でのUC材料の相分離や凝集を抑え、かつ配向制御された固体材料の開発が課題であった。このため、UC材料として分子設計された含白金共役系ポリマーを合成し、このポリマーが基板上に配列制御したUC発光性薄膜を作製する方法を開発するとともにその構造評価、UC発光特性を調べる。これらにより固体中の三重子励起子拡散長の異方性の解明を進め、UC効率の向上の実現につながる科学的基盤を構築する。 本研究の目的を達成するために、(Ⅰ) 分子設計に基づいた含白金共役系ポリマーの新規合成、(Ⅱ) 配向薄膜の作製と構造評価、(Ⅲ) UC特性評価と三重項励起子拡散異方性の解明、に焦点を定めて研究を実施する。 今年度は、主鎖に白金アセチリドとビスイミドを含む含白金共役系ポリマーの新規合成を行い、溶液中での光学特性とUC特性を評価した。なお含白金共役系骨格は、光励起でのUCにおける増感剤としての役割を担う。得られたポリマーの光学特性とUC特性を評価した。その結果、得られたポリマーを発光体である9,10-ジフェニルアントラセン(DPA)と混合した溶液を、450 nmの光で励起すると、380~430 nm近傍にアップコンバージョン光を発することが分かり、その量子収率は約20-30%と、溶液系としては高い値を示すことが分かった。これらのポリマーの一種で面内配向膜の作製に成功し、配向評価を実施した。さらに、より長波長(532 nm)である緑色光で励起可能な含白金共役系ポリマーの合成を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、研究代表者がのべ約4か月にわたって出勤率30%での制限下で実施することとなった。溶液中でUC特性を示す含白金共役系ポリマーの合成を行い、その光学特性評価とUC特性評価を実施した。これらのポリマーの一種で配向膜の作製に成功し、面内配向評価を実施した。これらの結果から、UCの増感剤としての役割を担い、かつ配向制御可能なポリマーの分子設計に関する指針が得られた。しかし、当初予定していた薄膜X線構造解析法ではパターンが観測されず、膜厚方向の配向を評価できなかった。代替手段として偏光FT-IR(透過とATR)での配向評価を検討しているが、装置側の都合により今年度中に評価を開始できなかった。 以上の事由により、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
より長波長(532 nm)で励起可能な含白金共役系ポリマーの溶液中での光学特性と、このポリマーと発光体を混合した溶液の光アップコンバージョン特性を評価する。 次に得られたポリマーの配向膜を作製する手法を引き続き開発し、得られた薄膜内の分子配列の配向評価を行う。この配向膜に発光体を導入し、発光特性とアップコンバージョン特性を評価する。基板上に配向していないポリマー薄膜の発光およびアップコンバージョン特性を比較することで、ポリマーの配向構造と三重項励起子拡散異方性との相関を解明する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、昨年度に引き続き旅費が全く発生しなかった。また、装置側の都合で偏光FT-IRでの配向評価を今年度中に実施できず、この評価に必要な物品費が発生しなかった。次年度は未使用額をテクニカルスタッフ雇用費と物品費に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)