2021 Fiscal Year Research-status Report
多彩な発光色を示す凝集誘起発光分子の創製とメカノフルオロクロミック特性の解明
Project/Area Number |
20K05457
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
村岡 宏樹 岩手大学, 理工学部, 准教授 (50546934)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 凝集誘起発光分子 / 固体構造 / 固体発光 / 分子間相互作用 / メカノフルオロクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、テトラ(2-チエニル)エチレン(TTE)を基軸とした凝集誘起発光(AIE)分子を創製し、そのメカノフルオロクロミズム(MFC)特性を解明することを目的とする。 令和3年度は、昨年度までに合成と構造解析を達成した標的分子群、テトラキス(5-アリール-2-チエニル)チオフェン(Ar-TTE)のAIE特性評価を実施した。これら標的分子のAIE特性評価として、THF溶液に貧溶媒として水を任意の割合で混合した際の発光スペクトル測定を行い、発光波長と発光強度の変化を追跡した。水が0%のときは、明確な発光ピークが検出されず、発光色の視覚的な検出はできなかった。従って、標的分子は、THF溶液中、単分子として存在する場合にはチエニル基、アリール基の自由回転による無放射失活に起因して本質的に非発光性であることが確認された。一方で、水/THF混合溶液中、水の添加によって分子が凝集体を形成した状態では、発光ピーク強度が著しく増加し、発光色の視覚的な検出が可能となった。この結果より、分子が凝集体を形成することで分子内回転運動が制限され、無放射失活が抑制されることで発光性となることが証明された。また、興味深い結果として、水の割合の増加に伴って発光強度だけでなく、発光波長も段階的に変化し、発光色の多段階変化が視覚的に認められた。これは水の混合割合に応じて異なる凝集体、すなわち異なる発光波長を有する結晶性凝集体とアモルファス凝集体が形成されたことに起因する。以上の成果として、これら標的分子が分子凝集体を形成することで発光増強を示すAIE特性を有することを明らかとし、また、凝集体の集合構造の違いを反映して異なる発光色の発現が可能であること、アリール基の違いによって分子の凝集性を制御でき、発光色のチューニングが可能であることを見出すに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標的分子として合成したAr-TTEの系統的なAIE特性を実施し、分子設計通りにAIE特性を有することを明らかとした。AIE特性評価を通して、これら標的分子が異なる凝集体、結晶性凝集体とアモルファス性凝集体を形成可能であり、それらの発光光波長の違いを反映して異なる発光色が視覚的に検出されることを見出した。この結果から、一連の標的分子の固体がMFC(結晶性固体からアモルファス性固体への相転移に基づく発光色の変化)を示す可能性が示唆された。現在、再結晶にて得られた標的分子の結晶性固体の機械的刺激に対する発光応答(MFC特性)を調査している。従って、Ar-TTEがAIEを示すことを実証し、次の段階としてMFC特性評価を開始できているため、概ね研究計画通りに進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Ar-TTEの系統的なMFC特性評価を実施する。再結晶にて得られた標的分子群の結晶性固体を磨砕してアモルファス化し、さらに、アモルファス化した固体を加熱または溶媒蒸気暴露によって、再結晶化する。この結晶とアモルファス間の可逆的な相転移による発光波長(発光色)の変化と発光効率の変化を、一連の標的分子群について系統的に調査し、MFCの発現と可逆性の有無、MFC特性と固体構造の相関について明らかとする。それと並行して、もう一つの標的分子、TTE骨格内のチオフェン環を柔軟なエチレン鎖で架橋したEB-TTE (ethylene bridged TTE)の四つのチオフェン環上を様々なアリール基で修飾したAr-EBTTEの合成に着手し、合成が完了次第、固体構造解析、AIE並びにMFC特性評価を開始する。
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