2020 Fiscal Year Research-status Report
Optical resolution of weak acids with chiral amidines
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20K05458
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小玉 康一 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (90509712)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光学分割 / キラリティー / 有機結晶 / 不斉認識 / 水素結合 / アミジン / フェノール / 軸不斉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、弱酸性化合物であるフェノール類に対して、ジアステレオマー塩法による光学分割を適用するために、新規な光学分割剤として強塩基性のキラルなアミジンを開発し、その性能を評価することを目的とした。 まず令和2年度はキラルなアミジンに関する知見を得るために、文献にて報告されているN,N’-二置換キラルアミジン(1)の合成を検討した。化合物1は光学活性1-フェニルエチルアミンを原料として、収率29%で合成することができた。光学分割の対象化合物として、軸性キラリティーを有する1,1’-ビ-2-ナフトール(BINOL)を用いた。しかし、化合物1とBINOLを混合して結晶化を試みたところ、BINOL単独での結晶化も観測され、ジアステレオマー塩形成における再現性が得られなかった。これはアミジンの窒素原子上に導入したキラル置換基の立体障害によるものであると考えた。そこで次に、窒素原子上に置換基を持たない、無置換キラルアミジンの合成を試みた。 無置換キラルアミジンの合成例はあまり知られていない。そこで、入手容易なキラルカルボン酸であるナプロキセンを原料として、無置換キラルアミジンの合成を試みた。中間体としてニトリルを経由する5段階の官能基変換反応を経て、収率13%で目的とする無置換アミジンの合成に成功した。しかし、得られたアミジンは全く旋光性を示さず、その光学純度が著しく低下していることがわかった。これは、アミジン部の影響で、隣接する不斉炭素原子に置換した水素の酸性度が高くなっており、容易にラセミ化が進行したものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに無置換キラルアミジンの合成には成功したが、残念ながらラセミ化反応の進行により、光学分割剤としての性能を評価することはできなかった。一方で、カルボン酸からアミジンへの官能基変換の手法については確立することができたため、研究はおおむね予定通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究によって、無置換アミジンを合成する手法については確立できたため、令和3年度は他のキラルカルボン酸を原料とした無置換キラルアミジンの合成を試みる。得られたキラルなアミジンの光学純度が低下していないことを確認し、BINOLをはじめとするフェノール類の光学分割に適用可能であるかどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
令和2年度はコロナ禍のために大学での研究活動が制限され、合成用試薬やガラス器具の破損に伴う支出が予定より大幅に少なくなった。また、学生の学会参加も見送ったため、旅費として計上していた予算を使用しなかった。そのため、次年度使用額が生じた。令和3年度は研究活動が活発になる見込みであるため、合成用試薬や汎用溶媒などの消耗品の経費の増加が見込まれる。また、研究成果発表のための経費を支出する予定である。
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