2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K05460
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相川 光介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (30401532)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フッ素化反応 / ペルフルオロアルキル基 / 含フッ素化合物 / フッ素ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
不溶不融の耐熱性樹脂として知られているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が発見されて以来、含フッ素高分子は我々の生活のいたるところで活躍し、現代社会を維持するうえで欠くことができない物質となっている。これは、炭素-フッ素結合がもたらす様々な性質が、含フッ素高分子材料の特異な機能(化学的安定性、電気特性、光学特性、屈折率や光透過性など)として発現した結果である。 一方、ペルフルオロアルキル(RF)基は、螺旋構造を有し、リニアーで剛直な性質が発現する。この剛直さゆえに、例えば長鎖のRF基をペンダント側鎖として導入したポリマーは、配向や結晶化などの秩序構造を形成しやすく、自由エネルギーのより低い表面を形成する。このように鎖状RF基は、新たな機能性材料を設計する上で欠かせないものとなっている。 これら鎖状RF基に対して、6員環を除いた環状RF化合物の合成研究は極めて限られており、その応用研究に至ってはこれまで報告例はない。何故ならば、構造の剛直さゆえに通常の有機合成で用いられる環化反応が利用できないためである。この現状に対して、我々はフッ素ガスを用いて環状アルキル化合物を一挙に全フッ素化することで、環状RF化合物を合成する新しい手法の開発に着手した。螺旋構造を好む鎖状RF化合物と異なり、環状RF化合物が固体および溶液状態でどのような構造および動的挙動を示すのか、学術的な構造化学の観点からも大変興味が持たれる。 今年度は、まず初めに、フッ素ガスによる全フッ素化反応に用いるフッ素系溶媒に可溶な環状アルキル化合物(基質)を合成した。調製した基質を用いて、フッ素ガスによる C-H 結合の全フッ素化反応を行ったところ、フッ素化された生成物は観測されたものの、分子内でC-C結合が形成することで得られる多環式化合物が生成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進行している。まず初めに、フッ素系溶媒に可溶な基質である環状アルキル化合物の合成法を確立することができた。続くフッ素ガスによる C-H 結合の全フッ素化反応では、分子内でC-C結合が形成することで得られる多環式化合物が生成したが、現段階で高度にフッ素化された生成物は得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
フッ素系溶媒に可溶な基質である部分的にフッ素化された環状アルキル化合物を用いて全フッ素化反応を試みる。これにより分子内でC-C結合が形成することで得られる多環式化合物の生成を抑制できると考えている。 目的の環状RF化合物が合成できた場合、沸点(℃)、凝固点(℃)、密度(gcm-3)、粘土(mP・s)、表面張力(mNm-1)、引火点(℃)といった基本的な物性値のみならず、相溶性、屈折率(nD20 = 1.3 である n-C7F16との比較など)、ガス溶解度および生体内蓄積性の調査を行う。また、構造調査に関しては、螺旋構造を好む剛直な鎖状RF基と比較して、環状RF基がどのような構造を有するのか、単結晶X線構造解析を含めてその三次元立体構造を明らかとする。
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Causes of Carryover |
今年度の経費は概ね予定通りに使用された。次年度の使用額が453円となったが、これは次年度の実験に必要な物品費に充てる予定である。
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