2021 Fiscal Year Research-status Report
Complete stabilization of triplet carbenes by immobilization through self-assembled monolayer of tripod-shaped trithiol
Project/Area Number |
20K05462
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
北川 敏一 三重大学, 工学研究科, 教授 (20183791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 克幸 三重大学, 地域イノベーション推進機構, 准教授 (80208793)
岡崎 隆男 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 教授 (90301241)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 三重項カルベン / ジアゾメタン / 分子三脚 / アダマンタン / 自己組織化単分子膜 / 光化学反応 / サイクリックボルタンメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、安定発生が困難な有機活性種である三重項カルベンを、金属基板表面に形成した自己組織化単分子膜上で発生させ、カルベンの主な減衰経路である二量化を禁止して長寿命化を図る。単分子膜の形成には、アダマンタン骨格をコアにもつ三脚形分子を用いることにより垂直配向を保ちながら分子を基板表面に3点で強固に吸着させる。昨年度はジアントリルカルベンの前駆体であるジアゾメタンと三脚形トリチオールを連結した分子を合成し、Au基板上にAu-S結合に基づく単分子膜を作製した。令和3年度にはこれを進展させ、以下の成果を得た。 1.自己組織化単分子膜上でのカルベンの発生とフェロセニルメタノールによる捕捉 アダマンタン三脚-ジアントリルジアゾメタン連結分子の自己組織化単分子膜に対してフェロセニルメタノールの存在下での光照射により脱窒素化を行い、カルベンを発生させた。カルベンはこの条件で二量化を起こし得ないため、O-H挿入反応により高効率でフェロセニルメタノールにより捕捉されると期待される。この捕捉により基板に結合したフェロセニル基をサイクリックボルタンメトリーで定量し、カルベンの12%が捕捉されたことを確認した。 2.立体混雑の少ないジアゾメタンと分子三脚の連結体の合成 低い捕捉率(12%)が観測された原因の一つとして、二つのアントリル基による立体障害のため、カルベン中心炭素と捕捉剤のOH基の接近が阻害されたことが考えられる。そこで、立体障害を低減したカルベンであるアントリルフェニルカルベンの捕捉を検討することを目的として、これに対応するジアゾメタンと三脚形トリチオールの連結分子を合成するとともに、その単分子膜を作製した。このカルベンの捕捉率を今後測定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジアントリルカルベンを基板に固定した条件で光照射により発生させ、電子スピン共鳴(ESR)によるカルベンの観測を試みたが、単分子層中に存在するカルベンの分子数が十分でないため、カルベンピークの確認は困難であった。一方、フェロセニルメタノールのOH基による捕捉実験では、カルベン捕捉により基板に結合したフェロセニル基を電気化学的に定量することができた。しかし、捕捉率は低い値(12%)であったため、発生したカルベンは完全捕捉されていないことが示された。捕捉率を改善するための策として、カルベンあるいは捕捉剤の立体障害を低減することが有効と思われるため、立体混雑の小さいカルベンの捕捉を調べるために1個のアントリル基をフェニル基に置き換えたカルベンの前駆体合成と単分子膜作製を行い、捕捉実験の準備を整えた。一方、捕捉剤のフェロセニル基の立体障害を小さくするために、フェロセンとOH基が長い炭素鎖で結ばれたアルコールFc(CH2)nOH (n = 6)の合成を現在進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
立体障害を軽減したアントリルフェニルカルベンを基板上で発生させ、捕捉率の向上を確認する。捕捉剤として、OH基が長い炭素鎖の末端に結合したフェロセニルアルコール(炭素数6以上)を用いて立体障害を小さくし、捕捉率改善の可能性を調べる。高い捕捉率が実現すれば、基板上のカルベンを高精度で定量できることになる。これによりカルベンの表面密度の減衰を調べて寿命を評価し、基板に固定されていないカルベンとの寿命の比較により単分子膜のカルベン安定化を検証する。
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