2021 Fiscal Year Research-status Report
π共役の自在制御に基づく新規4nπ電子系の構築と弱いπ結合の創出
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20K05464
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小西 彬仁 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10756480)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 開殻性 / 反芳香族性 / 非交互炭化水素 / キャリア輸送能 |
Outline of Annual Research Achievements |
開殻性分子は、基礎/応用その両面から盛んに研究がおこなわれている。その設計指針として、Clar's sextetの経験則に基づいた、芳香族安定化をいかに取り込むかが重要な指針となっている。しかしこの経験則では、必然的に分子サイズが大きくなり、安定性や取り扱いに対する課題が顕在化している。この現状に対し、本申請課題では出来るだけ小さい共役系での開殻性発現およびその理解に取り組んだ。基本構造として、4nπ電子系の積極的な活用を行い、(1)開殻性と反芳香族性を備えた分子の機能性材料としての展開、(2)ケクレ三重項分子の合成と単離、(3)共役クムレン骨格の高集積π共役系への変換、に取り組んだ。 (1)開殻性と反芳香族性を備えた分子の機能性材料としての展開について:ヘテロ原子を導入した新規ペンタレン誘導体を2種新たに合成・単離し、その性状を詳細に解明した。さらに、π拡張ペンタレン誘導体について、アモルファス薄膜中のホール輸送能を測定し、キャリア移動相としての有用性を明らかにした。本成果は、関連化合物における初例となった。 (2)ケクレ三重項分子の合成と単離について:70年近く合成が追求されていた、ビスペリアズレン誘導体の合成と単離を達成し、その電子物性を詳細に解明した。従来予測されていた基底三重項ではなく、基底一重項分子であることが明らかとなった。さらにそのエネルギーギャップは、置換基により制御可能であることを明らかにした。 (3)共役クムレン骨格の高集積π共役系への変換について:研究代表者が独自に生み出した共役ビスブタトリエンから、有用なπ共役骨格への短工程変換反応を新規に見出した。その反応における基質一般性を明らかにするとともに、特異な骨格の迅速構築を達成した。 以上の知見を基に、学術論文5報、総説1報、邦文解説1報を報告し、18件の学会発表、1件の招待講演を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする化合物の合成およびその評価を達成し、その電子物性を明らかに出来た。いくつかの化合物については、既に学術論文として報告することが出来た。現在進行形の化合物についても、有用な前駆体の合成まで達成しており、さらなる標的・課題が明確になった。すでにこれらの課題の解明に着手しており、今後の進展が強く期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
開殻性と反芳香族性を兼ね備えた分子系について、ホール輸送材料としての機能展開の可能性を明確に示すことが出来た。引き続いて、含ヘテロ元素分子系について、そのキャリア輸送能評価を実施し、さらなる性能の向上を目指す。 ケクレ三重項分子については、標的分子の単離とキャラクタリゼーションを達成した。予備的な検討から、π拡張によりその基底電子状態が大きく変化することが明らかとなった。今後は、このπ拡張体の単離と性状に解明に力を注ぐ。特殊な電子状態を示す本系について、包括的な理解と合理的な設計指針の確立を目指す。 クムレン分子を用いた骨格構築は、4nπ電子系オリゴマーの合成の検討を行う。π系を拡張した前駆体の合成を速やかに実施する。
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