2022 Fiscal Year Annual Research Report
π共役の自在制御に基づく新規4nπ電子系の構築と弱いπ結合の創出
Project/Area Number |
20K05464
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小西 彬仁 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (10756480)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 開殻性 / 反芳香族性 / 非交互炭化水素 / クムレン / キャリア輸送能 |
Outline of Annual Research Achievements |
開殻性分子は、基礎/応用その両面から盛んに研究がおこなわれている。その設計指針として、Clar's sextetの経験則が重要な指針となっている。しかしこの経験則では、必然的に分子サイズが大きくなり、安定性や取り扱いに対する課題が顕在化している。この現状に対し、本申請課題では出来るだけ小さい共役系での開殻性発現およびその理解に取り組んだ。基本構造として、4nπ電子系の積極的な活用を行い、(1)開殻性と反芳香族性を備えた分子の機能性材料としての展開、(2)ケクレ三重項分子の合成と単離、(3)共役クムレン骨格の高集積π共役系への変換、に取り組んだ。 (1)開殻性と反芳香族性を備えた分子の機能性材料としての展開:最終年度ではヘテロ原子を導入した新規ペンタレン誘導体を2種新たに合成・単離し、その性状を詳細に解明し、ホール輸送材料としての機能展開を行った。研究期間全体を通じ、擬ヤーン・テラー効果による特異な構造変化を実験的に解明した。 (2)ケクレ三重項分子の合成と単離:研究期間全体を通じ、70年近く追求されていた、ビスペリアズレン誘導体の合成と単離を達成し、その電子物性を詳細に解明した。従来予測されていた基底三重項ではなく、基底一重項分子であることを見出した。最終年度では特に、基底一重項ー励起三重項間のエネルギーギャップは、置換基により制御可能であることをあきらかにした。 (3)共役クムレン骨格の高集積π共役系への変換:研究期間全体を通じ、研究代表者が独自に生み出した共役ビスブタトリエンから、有用なπ共役骨格への短工程変換反応を新規に見出した。最終年度では特に、変換反応における基質一般性を明確にし、従来では合成困難であった骨格への変換を複数実証し、クムレン骨格の合成化学的価値を確立した。 期間内に、学術論文12報(含総説3報、邦文解説1報)を報告し、5件の招待講演を実施した。
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Research Products
(23 results)