2021 Fiscal Year Research-status Report
Development and function evaluation of tetracene derivatives having extremely high light-durability
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20K05465
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
北村 千寿 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (60295748)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有機合成 / 多環式芳香族 / アセン / テトラセン / 5員環縮環 / 光耐久性 / 有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
テトラセン骨格に1つのインデン縮環と1つのシクロペンテン縮環を行ったテトラセン誘導体について、その溶液は4週間後でさえも3%程度しか分解の行い、著しく光耐久性を有する分子であることをこれまでに見出している。2つある縮環のうち、どちらの縮環の方がより光耐久性に寄与しているかを調べるために、2つのインデン縮環、または、2つのシクロペンテン縮環をもったテトラセン誘導体を合成して調べることにした。今までの合成法を大きく変更し、シクロヘキサン環が末端に付いたアントラセン(1,2,3,4-テトラヒドロテトラセン)を新しい出発原料に用い、まずそのジブロモ体(化合物Aとする)を合成した。化合物Aに二重シクロペンテンアニュレーション、続く、脱水素芳香族化を行い、2つのシクロペンテン縮環をもつテトラセンBを合成した。次に、Aに鈴木-宮浦カップリング・Scholl反応・脱水素芳香族化を行い、2つのインデン縮環をもつテトラセンCを合成した。両方ともに通常のテトラセン誘導体に比べて光耐久性があることがわかったが、テトラセンCの光分解の半減期は約2日だったのに対し、テトラセンBは28日後で97%残存と、これまでに縮環を行った誘導体の中でも最も光耐久性をもつことを明らかにした。サイクリックボルタンメトリー測定から、テトラセンBはきれいな可逆な酸化を示したが、テトラセンCの酸化波は擬可逆的な挙動を示した。このことは、テトラセンC内に含まれる4つのアルコキシ基が芳香環の最高占有分子軌道(HOMO)を上昇させたことが不安定化に寄与に導いたことを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縮環位置が同じで、縮環部位が異なる2種類の分子の合成を新しく開発することができた。これまでの結果を合わせると、シクロペンテン縮環が1個か2個あると光耐久性が著しく向上すること、シクロペンテン縮環が0個だとやや安定性に欠けるという重要な分子設計指針を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の縮環の違いによる安定性の差が出た結果を受けて、シクロペンテン環がテトラセンの異なった位置に縮環した場合に、その光耐久性がどのように変化していくかを調べる。さらに、シクロペンテン環にフェニル置換基を入れているが、このフェニル基に電子的効果の異なる置換基を導入して、置換基効果が出るかについても検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス流行の影響を受け、学会が全てオンライン開催となり、また開催数も減ったことから、旅費に当たる分の使用が減ってしまった。研究自体は順調に進んでいるために、令和4年度の夏までに余った分は使用していく予定である。
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