2020 Fiscal Year Research-status Report
Exploring new functional properties induced from the dynamic behavior of pi-extended trityl radical derivatives
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20K05475
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西内 智彦 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10706774)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トリチルラジカル / 動的挙動 / 構造変化 / 外部刺激応答 / トリチルカチオン / 固体発光 / 室温りん光 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的とする化合物の一つであるHBC拡張型トリチルラジカルに関して、当該年度では順調に進めることができ、現在ラジカル体の前駆体まで単離することに成功した。今後さらに各反応の収率の改善を進めると共に目的のラジカル体の合成を行い、各種測定からその物性を明らかにする予定である。 そして当初の予定にはない複数の化合物において、当該研究目的を遂行する上で非常に重要な知見を得ることが出来たので以下にその概要の一部を記す。まずは二枚のアントラセン骨格を2.8Åの距離で密接させたπクラスター分子において、光照射による光異性体が熱による逆反応で元の構造に戻る際、形成された二つの炭素-炭素結合が段階的に開裂し、トリチルラジカル二量体構造を遷移状態に持つことが量子化学計算により分かった。向かい合ったトリチル骨格上の二つの不対電子が単結合するかどうかという動的挙動によって顕著なクロミズム特性や光照射による結晶のジャンピングといった光サリエント効果の発現という興味深い物性を明らかにした。 また、π拡張トリチルラジカルの合成途中の前駆体において、嵩高い芳香環が二重結合周りに密集していることによって二重結合周りのわずかなねじれ角の違い等が結晶状態の光物性に大きく影響を与えることを実験的・理論的に明らかにし、さらに結晶に静水圧で加圧することで二重結合周りの構造変化を促しその光物性をコントロールできることも見出した。 最後に、トリチルラジカルの一電子酸化体であるトリチルカチオンにおいて偶然にも非常に興味深い物性を明らかにできた。トリチルカチオンは一番最初に単離された炭化水素カチオンであるが、今回それが結晶状態という動的挙動が制限された状態で強い発光挙動を示すこと、77Kに冷やすことで結晶の色が変化するサーモクロミズム、そして発光が室温りん光であることを初めて突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した当初の計画にある研究内容について、目的化合物の一つであるHBC拡張トリチルラジカルの合成は前駆体まで問題なく進んでおり、ラジカル化合物の物性について十分評価できる段階まで到達している。 そして当初の計画にはなかった幾つもの化合物において、本研究計画を進める上で重要な知見を数多く得ることが出来た。まずは二枚のアントラセン骨格を2.8Åの距離で密接させたπクラスター分子において、光照射による光異性体が熱による逆反応で元の構造に戻る際、形成された二つの炭素-炭素結合が段階的に開裂し、トリチルラジカル二量体構造を遷移状態に持つことが量子化学計算により分かった。向かい合ったトリチル骨格上の二つの不対電子が単結合するかどうかという動的挙動によって顕著なクロミズム特性や光照射による結晶のジャンピングといった光サリエント効果の発現という興味深い物性を明らかにし、学術論文にも掲載することが出来た。 次に嵩高い芳香環が二重結合周りに密集した化合物では、二重結合周りのわずかなねじれ角の違い等が結晶状態の光物性に大きく影響を与えることを実験的・理論的に明らかにし、さらに結晶に静水圧で加圧することで二重結合周りの構造変化を促しその光物性をコントロールできることも見出し、現在論文投稿準備中である。 そして三つのアントラセン骨格からなるトリチルラジカル誘導体について、窒素原子をアントラセン骨格に導入した各種ラジカルの合成にも成功し、窒素原子の存在が分子間におけるσ結合形成を抑制できることが分かり、現在投稿準備中である。 最後に、代表的な炭化水素カチオンであるトリチルカチオンにおいて偶然にも固体状態で強い発光現象を有することやその結晶を冷やすことで色が変わるサーモクロミズム現象を示すこと、そして固体状態の発光が室温りん光であるという興味深い物性を示すことを明らかにし、現在論文投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、まず当初の予定通りHBCで拡張したトリチルラジカル誘導体の合成を続け、その物性の解明およびキラル誘導を行えるか検討を行う。そしてペンタセン骨格を有するトリチルラジカル誘導体も引き続き合成に取組み、分子内のスピン分布と分子構造のコントロールの検討を行う。 また、2020年度において固体状態における分子構造のわずかな違いによる物性コントロールを行うことが出来たので、この点について他にも物性を引き出すことが出来ないかより深く検討を行う。特にダイアモンドアンピルセルを使った結晶への加圧は、分子内および分子間の芳香環同士の相互作用を極限まで高めることが可能なため、新しい物性を見つけ出すことが大いに期待できると考えている。
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