2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploring new functional properties induced from the dynamic behavior of pi-extended trityl radical derivatives
Project/Area Number |
20K05475
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西内 智彦 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10706774)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | トリチルラジカル / 動的挙動 / 構造変化 / 外部刺激応答 / トリチルカチオン / 固体発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
①申請書に記載した当初の計画にある研究内容について、目的化合物の一つであるHBC拡張トリチルラジカルの合成はラジカル種の発生を電子スピン共鳴(ESR)スペクトルにて確認することに成功した。そして意外にもπ拡張を行ったにもかかわらず高い反応性を有することが判明した。令和4年度においては、その高い反応性の起源を探りHBC拡張トリチルラジカルの物性を明らかにする。 もう一方の研究テーマとなるテトラセンやペンタセンを有するπ拡張型トリチルラジカルについても順調に研究は進んでおり、π拡張による動的挙動の変化について明らかになりつつある。さらに量子化学計算においてラジカル状態と一電子酸化されたカチオン状態では分子骨格自体は大きな変化がないものの、その動的挙動に伴う活性化エネルギーが大幅に変化することが見出された。従って、酸化還元による外部刺激で分子の動的挙動をコントロールできる興味深いシステムの構築が可能になると考えられる。 ②令和3年度では当初の計画にはなかったいくつかのトリチル骨格誘導体について、学術誌に報告できる新たな物性を見出すことが出来た。(a)無置換トリチルカチオンにおける固体状態での強い発光挙動、サーモクロミズム、りん光発光についてその詳細を明らかにし、学術誌に報告することが出来た。(b)アセチレンでπ拡張したトリ(9-アントリル)メチル(TAntM)ラジカル誘導体を合成し、その安定性を明らかにした。またアセチレン部分へのディールス・アルダー反応を行うことで様々な誘導体へと導くことが可能となる手法を開発し、TAntMラジカルを用いた機能性分子開発の足掛かりを築いた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
①申請書に記載した当初の計画にある研究内容について、目的化合物の一つであるHBC拡張トリチルラジカルの合成はラジカル種の発生を電子スピン共鳴(ESR)スペクトルにて確認することに成功した。そして意外にもπ拡張を行ったにもかかわらず高い反応性を有することが判明した。令和4年度においては、その高い反応性の起源を探りHBC拡張トリチルラジカルの物性を明らかにする。 もう一方の研究テーマとなるテトラセンやペンタセンを有するπ拡張型トリチルラジカルについても順調に研究は進んでおり、π拡張による動的挙動の変化について明らかになりつつある。さらに量子化学計算においてラジカル状態と一電子酸化されたカチオン状態では分子骨格自体は大きな変化がないものの、その動的挙動に伴う活性化エネルギーが大幅に変化することが見出された。従って、酸化還元による外部刺激で分子骨格を変化させず分子の動的挙動(ポテンシャルエネルギー)をコントロールできる興味深いシステムの構築が可能になると考えられる。 ②昨年度の研究報告において当初の計画にはなかった様々なトリチル骨格誘導体が多くの興味深い物性を示すことを報告し、その後複数のジャーナルに論文として発表することが出来た。(a)無置換トリチルカチオンにおける固体状態での強い発光挙動、サーモクロミズム、りん光発光についてその詳細を明らかにし、学術誌に報告することが出来た。(b)アセチレンでπ拡張したトリ(9-アントリル)メチル(TAntM)ラジカル誘導体を合成し、その安定性を明らかにした。またアセチレン部分へのディールス・アルダー反応を行うことで様々な誘導体へと導くことが可能となる手法を開発し、TAntMラジカルを用いた機能性分子開発の足掛かりを築いた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、①HBC拡張トリチルラジカル誘導体は、その高い反応性について分光測定や量子化学計算からその起源を探る。そして結晶構造解析を試み、構造的な特徴を評価する。②テトラセンやペンタセンを有するπ拡張型トリチルラジカルは酸化状態(カチオン時)における動的挙動についても考察を進め、酸化還元による分子の運動性のコントロールを探る。 以上の研究において、加熱や加圧による電子状態の変化が起こるかについても検討を行い、わずかな分子構造の変化を利用した電子物性の制御が可能かどうかも明らかにする。
|
Causes of Carryover |
今回次年度使用額が生じた理由を以下に記載する。 ・研究申請当初、予定していた国際学会への参加がコロナ禍の影響で難しくなり参加を取りやめたため。
|
Research Products
(11 results)