2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Flytrap-typed Molecules with Integrated Properties
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20K05480
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
幅田 揚一 東邦大学, 理学部, 教授 (40218524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 茉莉 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (40711403)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サイクレン / 銀イオン / シッフ塩基 / 環化反応 / 反応速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は大環状化合物の高選択的・高収率合成法の構築について検討した. 環状化合物を合成する場合,二種類の試薬を1:1で反応させる必要があるが,通常は1:1で反応したもの以外が主生成物となるため環化生成物の収率は低くなる.そこでサイクレンに(1,1'-ビフェニル)-4-カルバルデヒド基とフェニル基を側鎖芳香環として導入した銀食い分子(L)の銀錯体を形成させて芳香環側鎖が立ち上がることでホルミル基どうしが近づくことを利用して,m-キシリレンジアミンとの反応で得られるシッフ塩基形環化生成物が高選択的・高収率で得られるか検討した.はじめに313KでLとジアミンを混合したところ24時間後に原料が消失した,ESI-MSにて生成した化合物を確認したところ,反応終了時点で環化生成物に由来する分子イオンピークのみ観測された.この反応は銀イオン存在下では銀イオンがない場合と比較して約7倍反応速度定数が高くなった.環化生成物の銀錯体の構造は,X線結晶構造によって確認した.さらにこの銀錯体を還元後,メチル化したところ,シッフ塩基部位が3級アミンに変換された環化生成物が得られ,この化合物についてもX線結晶構造解析を行った. 一方,m-キシリレンジアミンの代わりにα,ω-アルキルジアミン(NH2-(CH2)n-NH2, n=4, 6, 8)を用いて同様の検討を行ったところ,9日経ってもLのホルミル基のプロトンシグナルが消失しなかった.これらの反応速度はm-キシリレンジアミンを加えた時の約100分の1程度の反応速度定数であった. 以上のことから,Lとm-キシリレンジアミンとの反応で高選択的かつ高収率でシッフ塩基型環状生成物が生成すること,および銀イオンの存在は反応速度を促進することを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
m-xylylenediamineの異性体である,p-xylylenediamineを用いて同様の反応を行ったところ,2:2で環化したシッフ塩基型大環状生成物が定量的に得ることができた.この構造は1Hおよび13C NMRスペクトル,ESI-MS,元素分析,X線結晶構造解析によって確認した. 3個のアミノメチル基がベンゼン環の1-, 3-, 5-位に導入された1,3,5-tris-(aminomethyl)-benzene を用いて環状化合物の合成を試みたところ,Lがトリアミンの2個のアミノ基と反応して,1:1シッフ塩基型環状化合物を形成し,さらに残りのアミノ基がLと2:1でシッフ塩基を形成したような,L:トリアミン=3:2の化合物が得られた.この化合物については1Hおよび13C NMR,ESI-MS,元素分析にて確認した. 以上のことから,Lとアミンを反応させてシッフ塩基型環状化合物を形成させるときに,どのようなアミンが有効であるかについても有益なデータを得ることができた.これらの化合物については現在,論文を執筆中である.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2022年度は以下のテーマについて研究を進める. 【架橋ビステトラアームドサイクレンの銀錯体とα,ω-アルキルジニトリルによる定性的環化生成物の形成】 多段階合成が必要でかつ低収率でしか得られない大環状化合物を,スチリルメチル側鎖を持つ架橋ビステトラアームドサイクレンの銀錯体とα,ω-アルキルジニトリルを用いて環化生成物の構築を試みる. 【側鎖に三重結合を導入したテトラアームドサイクレンの化学】 サイクレンの側鎖として,Ph-C≡C-CH2-基を導入したテトラアームドサイクレン(L2)の銀錯体は,CH3CNを疑似空孔内に包接することを見出した.そこで,三重結合を有する側鎖を導入した銀食い分子について,安定度,選択性などを詳細に検討する.さらに,L2をCH3CN中から再結晶すると,L2とCH3CNが1:1で水素結合した有機結晶を得た.この構造はX線結晶構造解析によって確認した.この有機結晶の形成がCH3CNに特異的なのか,あるいは他の分子を用いても有機結晶を形成するのか検討を加える.本研究では銀食い分子の化学をより進化させ,側鎖に三重結合を導入した化合物の化学も展開していく.
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Causes of Carryover |
2020および2021年度に開催された学会がほとんどオンラインになったため,旅費・宿泊費に関する支出を行わなかった. 2022年度は当初の計画通り消耗品に使用するとともに,研究計画の最終年度であるため論文のOpen Access費用等に使用する.
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