2022 Fiscal Year Annual Research Report
Innovative approach to illisimonin A by one-step multi-ring construction strategy
Project/Area Number |
20K05485
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 孝洋 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80367052)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 天然物全合成 / セスキテルペン / Diels-Alder反応 / ビシクロ[2.2.1]ヘプタン |
Outline of Annual Research Achievements |
立体的に複雑な縮環構造(高次構造)を有する天然有機化合物(天然物)は、有用な生物活性を示すものが多く、医薬品・農薬として利用されてきた。それらの多くは有機化学的に合成されているが、依然として合成未達成のものも残されている。申請者の提案する「一段階多重環構築戦略」は、これらの合成困難な高次構造天然物に対する有効なアプローチであると考えている。そこで本研究では、近年シキミ属植物から単離が報告されたイリシモニンAを標的化合物とし、全合成を達成することで「一段階多重環構築戦略」の有用性を実証することにした。 イリシモニンAの全合成に向けて、すべての必要な官能基を備えた基質を調製し、Diels-Alder反応の検討を行った。アセトフェノンユニットはモデル合成と同様の方法で調製し、ブテニルグリニャール試薬を付加した。ジエノフィル部の構築は、末端アルケンのオゾン分解の後、Still-Gennari法によるZ-選択的3置換アルケン構築を経て達成した。得られた前駆体は、モデル合成と同様に、芳香環の酸化によるオルトベンゾキノンへの変換と加熱条件下のDiels-Alder反応により、低収率ながらアロセドラン骨格へと変換することに成功した。得られた環化体は、すべての立体化学について天然物と同様の配置をしており、C4位以外のすべての酸素官能基を備えている。 続いて、生合成経路を模倣したイリシモニンA骨格への転位の検討を行った。ビニルエーテル部の加水分解の後、NaOH水溶液で処理することで、レトロクライゼン反応/アルドール反応によって転位体を得ることに成功した。生じたα-ヒドロキカルボン酸の立体化学は未決定であるが、天然物と同じ立体化学であれば、脱保護によりRychnovskyらの合成中間体と同一の化合物となる。最後にC4位のC-H酸化反応を行うことで、イリシモニンAの全合成を達成する予定である。
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Research Products
(8 results)