2020 Fiscal Year Research-status Report
トリフルオロメチル基の選択的活性化と有機フッ素化合物合成への利用
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20K05486
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渕辺 耕平 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (10348493)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フッ素 / 活性化 / カルボカチオン / ルイス酸 / Friedel-Crafts / シクロプロパン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、炭素の混成状態が変わることで過剰反応が抑制される現象を「生成物の形を変える反応設計」としてその基盤に据え、これを発展させて独自の有機フッ素化合物合成の体系を構築することを目指す。 本研究におけるアプローチは、(I)これまでの成果の拡張 と、(II)二次中間体調製への展開 の2つの段階に分けられる。 令和2年度は、段階(I)にあたる1,1-ジフルオロシクロプロパンの選択的活性化を実現した。具体的には、1,1-ジフルオロシクロプロパンに対してジメチルアルミニウムクロリド存在下、種々のアレーンを作用させた。反応基質が有していた二つのフッ素置換基のうち一つが失われ、代わりに新たにアリール基が導入された1-アリール-2-フルオロプロペン誘導体を高収率で得た。生成物である1-アリール-2-フルオロプロペン誘導体からさらにフッ素置換基が失われたような生成物(過剰反応生成物)は全く見られなかった(選択的活性化)。 本反応ではまず、sp3混成炭素上のフッ素置換基がアルミニウムルイス酸により脱離している。ついで、生じたカルボカチオンが i) 環拡大と ii) Friede-Crafts型アリール化を起こしている。 この成果は、これまでトリフルオロメチル化合物に限られていた反応基質をジフルオロシクロプロパンに拡張したものであり、本反応が基盤とする「生成物の形を変える反応設計」の適用範囲の広さを示すものである。なお、反応基質である1,1-ジフルオロシクロプロパンは、ジフルオロカルベンとアルケンの[2+1]付加環化で簡便に調製できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、1,1-ジフルオロシクロプロパンを反応基質とする1-アリール-2-フルオロプロペン誘導体 (フルオロアルケン) の合成反応を見出した。一般にフルオロアルケン -C(F)=C< は、アミド -C(=O)-NH- の生物学的等価体とみなすことができ、特に医薬の分野での有用性がある。このように、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に見出した1-アリール-2-フルオロプロペン誘導体の合成反応は、アミドの生物学的等価体供給法としてのポテンシャルがある。そこで令和3年度はアレーンに代わる求核剤に工夫をこらし、この反応をオリゴペプチドの供給法に発展させるべく、諸検討を行っていきたい。 また、研究期間の2年目にあたる令和3年度は、段階 (II) にあたる(II)二次中間体調製への展開についても検討を進めたく、ニッケルやパラジウム等、遷移金属錯体との取り合わせについても諸検討を行う。
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