2022 Fiscal Year Research-status Report
Synthetic Study of Hasubanan-type Alkaloids based on Oxidative Phenolic Coupling Reaction
Project/Area Number |
20K05488
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小田木 陽 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30772157)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 酸化的脱芳香族化 / アザーベンジル酸転位反応 / 環縮小反応 / 超原子価ヨウ素試薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】本年度は、本研究課題をさらに発展させるべく、ステファジアミンの全合成の際に見出した「アザーベンジル酸転位反応」を基盤としたパクタマイシンの全合成研究に着手した。パクタマイシンは、1961年に放線菌Streptomyces pactum var. pactumから単離されたアルカロイドである。パクタマイシンの構造的特徴として、母骨格すべての炭素上にヘテロ原子を有する高度に官能基化されたシクロペンタン環を有する。特に、C1、4、5位に連続した第四級不斉炭素は合成化学的に構築が困難であり、当該立体化学の効率的な構築法の開発は、パクタマイシンを合成す上で重要な課題である。我々は、脱芳香族化反応により得られるジエノンの位置選択的な官能基化とアザ-ベンジル酸転位反応を組み合わせることで、C1位のα-tert-アミンを含むパクタマイシンの高度に官能基化されたシクロペンタン環を効率的に合成できると考えた。本年度は、モデル基質を用いて当該アザ-ベンジル酸転位反応について検討を行った。 【研究結果】まず、パクタマイシンのC2位及びC3位の窒素官能基を除去したモデル化合物を設定し、検討を行った。市販のフェノールより6工程で分子内ヘミケータル部位を有する化合物を合成した。合成したヘミケタールに対して、メタノール中アンモニアを作用させることで望むアザ-ベンジル酸転位反応が進行することを見出した。これにより、パクタマイシンのC1位α-tert-アミノ基を有するシクロペンタン母骨格が得られることを見出した。引き続き、C2位及びC3位の窒素官能基の導入について検討を行い、パクタマイシンの全合成を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、本研究課題の基盤である(Ⅰ)脱芳香族化を伴う酸化的フェノールカップリング反応、及び(Ⅱ)ジエノン誘導体における位置選択的な分子内アザーマイケル反応、について検討を行い、ハスバナン骨格の効率的な構築法の開発に成功した。また、当該手法を用いることで、ハスバナンアルカロイドの一種である、メタファニン及びステファジアミンの全合成に成功した。本年度は、ステファジアミンの全合成の際に見出した「アザーベンジル酸転位反応」を基盤としたパクタマイシンの全合成研究に着手した。実際にモデル基質を用いることで望むアザーベンジル酸転位反応が進行し、パクタマイシンのシクロペンタン骨格が構築可能であることを見出した。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、本年度に得られた成果を基盤に、パクタマイシンの全合成研究に引き続き取り組む予定である。本年度は2位及び3位の窒素官能基を除去したモデル基質を用いることで、アザ-ベンジル酸転位反応によりC1位のα-tert-アミンを含むパクタマイシンの高度に官能基化されたシクロペンタン環を効率的に合成できることを見出した。引き続き2位及び3位の窒素官能基の導入について検討を行い、パクタマイシンの全合成を目指す。
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Causes of Carryover |
前年度、前々年度とコロナ禍における渡航や移動制限により予定していた共同研究などが進展せず、試薬や消耗品に使用予定であった予算を用いることができなかった。本年度より共同研究については再開しているが、遅れが生じている。そのため、消耗品費などにおいて差額が生じた。 使用計画 次年度においては、引き続き試薬や実験器具、消耗品の購入を行う。
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