2020 Fiscal Year Research-status Report
ホウ素化ポリエンの選択的ヒドロメタル化を活用したビルディングブロックの開発
Project/Area Number |
20K05489
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小峰 伸之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90302918)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 1-ボリル-1-シリル-2,4-ジエン / ヒドロシリル化 / トリエニルボラン / クロスカップリング反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物活性物質や機能性材料の中にはその部分構造としてジエン構造を有する化合物が多くみられる。従って、その効率的な合成手法の開発は重要な課題である。本研究では、ホウ素置換基を有するトリエンへのヒドロシランの付加反応による「ホウ素置換基とケイ素置換基を同一炭素上に有するジエン化合物」である1-ボリル-1-シリル-2,4-ペンタジエン誘導体の合成法を確立する。さらに、1-ボリル-1-シリル-2,4-ペンタジエン誘導体の中のホウ素置換基とケイ素置換基間の反応性の違いを利用して複数の結合形成反応を連続的かつ選択的に行う。すなわち、ジエン誘導体のシリル基とボリル基間での選択的なアリル転位を伴うカルボニル化合物への付加反応やクロスカップリング反応などを組み合わせて行うことにより連続的かつ選択的な結合生成反応を実現する。これにより様々なジエン化合物の選択的かつ効率的な合成法を確立する。 トリエニルホウ酸エステル誘導体のヒドロシリル化反応を行うに先立ち、より調製が容易なブタジエニルホウ酸ピナコールエステル誘導体と種々のシラン類との反応に関して、基質のスコープを明らかにした。その結果、シランとしては比較的酸性度の高いシランを用いると高収率で、対応する1-シリルアリルボラン誘導体が生成することを明らかとした。また、触媒としてはトリアルキルホスフィンを有するモノ(ホスフィン)パラジウム(0)錯体が高い活性を有することも明らかとなった。この知見をもとにトリエニルホウ酸ピナコールエステルのヒドロシリル化反応を行うことで、1-シリル-2,4-ペンタジエニルボラン誘導体の合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、研究推進の鍵となるホウ素置換基を有するトリエンのヒドロシリル化反応により、同一炭素上にボリル基とシリル基を有するジエンの合成法を確立に取り組んだ。まず、トリエニルホウ酸エステル誘導体のヒドロシリル化反応を行うに先立ち、より調製が容易なブタジエニルホウ酸ピナコールエステル誘導体のヒドロシリル化反応を検討した。その結果、シラン類としてはトリフェニルシラン、ジフェニルメチルシラン、ジフェニルベンジルシランなど比較的酸性度の高いシランを用いると高収率で、対応する1-シリルアリルボラン誘導体が生成することを明らかとした。また、触媒としてはトリメチルホスフィンやエチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィンを有するモノ(ホスフィン)パラジウム(0)錯体が、高活性な触媒能を有することを明らかとした。さらには、Pd2(dba)3錯体とパラジウムに対して一等量のホスフィン配位子を組み合わせ用いても、対応するモノ(ホスフィン)パラジウム(0)錯体を単離し用いた場合と同等の活性を有することも明らかとなり、より簡便な反応条件の確立に成功した。この知見をもとにトリエニルホウ酸ピナコールエステルのトリフェニルシランによるヒドロシリル化反応による1-ボリル-1-シリル-2,4-ペンタジエン誘導体の合成法の確立に成功した。以上のように、当初の実施計画に通りの成果を得ることができたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度はトリエニルホウ酸ピナコールエステルのトリフェニルシランによるヒドロシリル化反応を行うことで、1-シリル-2,4-ペンタジエニルボラン誘導体の合成法に確立することに成功した。令和3年度以降は、さらに本手法の一般性や基質の適用限界を明らかにし、様々な1-ボリル-1-シリル-2,4-ペンタジエン誘導体の合成を行う。さらに、1-ボリル-1-シリル-2,4-ペンタジエン誘導体を用いた連続的結合生成反応を行う。すなわち、1-ボリル-1-シリル-2,4-ペンタジエン誘導体を用いたカルボニル付加反応や鈴木・宮浦反応などのクロスカップリング反応、玉尾酸化などを組み合わせることで、連続的かつ選択的な結合生成反応による有用化合物の合成を行う。例えば、1-ボリル-1-シリル-2,4-ペンタジエン誘導体とカルボニル化合物との熱的条件下でのアリルボランとしての反応によるビニルシラン型化合物の生成に引き続くBrook転位を経由したアルキル化反応もしくは玉尾酸化反応や、1-ボリル-1-シリル-2,4-ペンタジエン誘導体とカルボニル化合物とのルイス酸に促進された2,4-ペンタジニルシランとしての反応によるビニルボラン型化合物の生成に引き続く鈴木・宮浦反応などを検討する。同様に、異なるホウ素置換基を有するトリエンのヒドロシリル化により合成した1,6-ジボリル-1-シリル-2,4-ヘキサジエン誘導体を用いて三連続的かつ選択的な結合生成反応を行う。また、光学活性配位子を有するパラジウム触媒を用いた不斉ヒドロシリル化反応により光学活性1-ボリル-1-シリル-2,4-ペンタジエン誘導体を合成し、光学活性な有用化合物の合成へ展開する。
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Causes of Carryover |
当初は本研究で得られた成果を国内外で発表するとともに、関連する研究の情報収集のために国内外の学会や国際会議への参加のための旅費の申請を行なった。しかしながら、参加予定であった学会の中止やオンラインにより実施されたことにより、当初予定した旅費を使用しなかった。そのため、次年度以降に繰り越すこととした。繰り越した資金は翌年度分として請求した助成金とともに、本手法の一般性や基質の適用限界を明らかにするための試薬類などの消耗品の購入や既存の分析機器の保守および次年度以降の学会や国際会議への参加のための旅費に使用する予定である。
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