2021 Fiscal Year Research-status Report
アンモニウム-π相互作用を基盤とする不斉光環化反応制御
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20K05490
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
山田 眞二 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (30183122)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カチオンーπ相互作用 / アンモニウム塩 / 共役イミニウム / [2+2]光二量化反応 / MacMillan触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、カチオン性基質自体が触媒として作用する可能性を検討した。すなわち、基質自体が正電荷を有することで、分子間相互作用により分子配向が制御され、その結果として光反応生成物の立体化学を制御することができるものと考えられる。以下の2点、(1)共役イミニウムの[2+2]光二量化反応、および(2)MacMillan触媒を用いる不斉[2+2]光二量化反応について検討を行った。 (1)共役イミニウムの[2+2]光二量化反応 共役アルデヒド、ケトンの光反応では、二量化が進行せず、cis/trans異性化が優先することが知られている。本研究では、共役アルデヒドから生成するイミニウムについて光二量化反応の検討を行った。共役ケトンを種々のイミニウムに変換後、光照射を行ったところ、[2+2]光付加環化反応が起こり、2量体の生成を確認することができた。さらに収率と選択性向上を目指し、固相光反応を検討した。固相反応は、分子が特定の配座で密に詰まって配列しているためcis/trans異性化を回避できると考えられる。基質結晶を作成しX線結晶解析により構造を調べた結果、基質結晶の配列が分子間相互作用によりHT型に配列し、二重結合間距離がSchmidt則を満たすことがわかった。固相光反応の結果、synHT二量体が収率良く生成することを明らかにした。 (2)MacMillan触媒を用いる不斉[2+2]光二量化反応 MacMillan触媒は様々な不斉反応に利用される有機触媒である。本研究では、本触媒が反応課程で生成する中間体のイミニウムイオンをアルケンとの光付加環化反応に用いることで、光学活性なシクロブタン誘導体を生成するものと考え検討した。現在まで、共役アルデヒドとMacMillan触媒とのイミニウム中間体を合成し、単離することに成功している。今後、種々のアルケンとの光付加環化反応を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正電荷を有する基質を用いることで基質自体に触媒的役割を持たせる点では、当初の計画とは少し異なる方向に研究をシフトしているが、分子間相互作用により分子配向が制御されることを、X線結晶解析により明らかにした。結晶に光照射を行うことで、位置および立体選択的にシクロブタン誘導体を得ることができた。このことは、一般に光二量化反応が起こらない共役ケトン、アルデヒドを、一旦共役イミニウムに変換することで光二量化反応を促進し、光反応生成物の立体化学を制御する新たな手法を見出したことを意味している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方向としては、引き続き上述の二項目について検討を行う。 イミニウム塩の光二量化反応では、固相のみならず、溶液中での反応について検討を行い収率および立体選択性の向上を目指す。ベンゼン環に電子供与性置換基を導入することで分子間カチオンーπ相互作用が強まり、[2+2]光二量化反応が促進されることが期待される。また、溶媒および対アニオンの影響についても検討する。さらに、生成物のシクロブタン誘導体は、イミニウム基あるいはカルボニル基を有するためマンニッヒ反応やアルドール反応により、4員環構造を有する様々な化合物の合成に利用できるものと考えられる。これにより、本手法の有用性を示す予定である。 二つ目のテーマであるMacMillan触媒を用いる不斉[2+2]光二量化反応では、中間体イミニウムと種々の基質との[2+2]光付加環化反応を検討し、付加環化生成物のエナンチオ選択性を明らかにする。また、高価なMacMillan触媒ではなく、入手容易なキラルアミンを用いてイミニウムを生成し、同様の検討を行う予定である。
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