2021 Fiscal Year Research-status Report
海産毒シガトキシン類および海洋産マクロライド類の収束的全合成
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20K05496
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
門田 功 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (30250666)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 全合成 / 海洋産天然物 / ポリ環状エーテル / マクロライド / 分子内アリル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はでは、海産毒シガトキシンCTX3Cの全合成に向け、分子右側に位置するAB環部の大量合成について検討を行った。まずデオキシリボースを出発原料とし、これまでに行ってきた手順でのスケールアップを図ることで必要な量のフラグメント合成を行った。まだ目的のセグメント合成には至っていないが、途中いくつかのステップの改善も図ることができ、このまま順調に合成を進めることができれば必要な量の合成中間体を得ることができると考えている。 一方、THPマクロライドの合成研究に関しては、まず海洋産マクロライドであるマンデラライドAの全合成について検討した。この化合物はTHF環、THP環の2つのエーテル環を有するマクロライド骨格が特徴的であり、それらの立体選択的かつ収束的な合成が重要な課題となる。本年度は、四酸化オスミウムを触媒とするオレフィンとジオールとの立体選択的環化反応を用いることによってTHP環を立体選択的に構築し、その後ラクトンを還元的アセチル化によってα-アセトキシエーテルに変換した後、ルイス酸存在下で側鎖部分に対応するシリルエノールエーテルと反応させることで必要な側鎖部分を導入することができた。もう一つのTHP環部についても、同様の方法論を適用すべく、必要な基質を合成しているところである。 これらの研究と並行してもう一つの標的分子であるルーカスカンドロライAの合成研究についても検討している。この化合物においては、この化合物は2つのTHP環部を有する特異なマクロライド構造を有している。最終的に一方のTHP環を構築しながら全体のマクロライド骨格を合成するために、まずは一方のTHP環の立体選択的合成と側鎖変換をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究全般に関してであるが、今回のコロナ禍により殆どの学生が一時自宅待機となり、その間、必要な合成実験が実施できない状態であった。その後自宅待機は解除され、研究室に来ることはできるようになったが、実験台の使用状況や居室でのデータ整理に関して、申請と許可が必要な変更が必要となり、実際の実験開始はかなり遅れてしまった。また、物品の流通にも支障が出ており、国内在庫のある薬品、実験器具についても発注から入手にかなり時間がかかつこともあり、輸入品についてはほぼ絶望的な絶望的で状況であった。その後、次第に自体は好転し、以前のような感覚で物品類を入手できるようになってきている。 しかしながら、当初の遅れがかなり尾を引き、シガトキシンAB環部の合成に関してはすでに終えている予定であったが、現在はまだ鍵段階の条件検討を行い始めたとこところである。 またTHP環マクロライドの合成研究に関しても大幅な遅れが生じ、マンデラライドAのTHF感を構築し、残るTHP環の合成についての条件検討を行っているところである。ルーカスカンドロライドの合成については、すぐに入手可能な薬品類を用いて、いずれ必要となる側鎖部分の合成を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
想定外の外的要因によって研究計画が大幅に遅れてしまった。特に合成実験に関してはオンラインで行うにはいかず、実験室での作業ができないため、実験室の活動開始を待たざるを得なかった。 しかしながら研究計画自体に問題があったわけではないので、当初の予定通り研究を進めていく。可能であれば少しペースアップして遅れを取り戻したいところであるが、現在、研究室でも濃厚接触者の疑いなどで自宅待機を余儀なくされている実験担当者などもおり、様子を見ながら無理のない範囲で研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、研究室の閉鎖や学生の入構禁止措置、および共通機器の使用制限などのため、研究活動が大幅に制限され、予定していた実験を十分に進めることができなかった。使用する薬品類や実験器具の購入についても流通が滞る時期があった。 また、より深刻な問題として実験を担当している学生が新型コロナ患者の濃厚接触者の疑いがかかり、しばらく自宅待機するなどの措置が取られ、重要な実験の実施に遅延が生じた。 また、行動制限のため出張費として計上していた費用はほとんど使用できなかった。 以上の理由のため、予定していた費用を十分に使用することができなかった。
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