2020 Fiscal Year Research-status Report
解離平衡特性をもつルイス酸と塩基を用いるアルケンの求電子置換反応
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20K05504
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 信也 東北大学, 環境保全センター, 講師 (80570142)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルケン / 求電子置換反応 / Lewis酸 / 塩基 / Friedel-Crafts反応 / アシル化 / ホルミル化 / ホスフィノ化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,2,6-ジブロモピリジン(DBP)のような適切なかさ高さと塩基性をもつ塩基はLewis酸と可逆的なLewisペアとなり両立できるという特性を利用してアルケンの求電子置換を広く確立すること,および塩基の本質的な役割を見出すことである.R2年度は,当初の計画に沿ってアルキル化,ホルミル化,触媒的アシル化について検討するなかで以下の結果を得た. 1.アルケンの求電子的ホルミル化:SnCl4/DBPの組み合わせ存在下にジクロロメチルメチルエーテルによりアルケンのホルミル化が効率的に進行することを見出した.この反応条件は,1,1-ジアリールエチレン類以外への適用性が低かったが,さらなるLewis酸/塩基の組み合わせを検討したところ,AgOTf/ピリジンを用いると幅広いアルケンのホルミル化が進行し,対応するビニルアルデヒドを与えることがわかった. 2.アルケンのFriedel-Craftsアルキル化:AlCl3/ピリジンまたはAlCl3/PPh3存在下に1,1-ジフェニルエチレン類のアルキル化が進行することは既にわかっていたが,多重反応などの副反応を制御できず,望ましい進展がなかった. 3.アルケンの触媒的Friedel-Craftsアシル化:InCl3を触媒として,酸無水物により種々のアルケンのアシル化が進行すること,および,カルボン酸と無水トリフルオロ酢酸から生じる混合酸無水物によりアシル化が進行することがわかった.以前のAlCl3/DBPを用いる手法では配位性官能基に対する許容性が低かったが,本手法では,電子供与基を中心に様々な官能基を許容できることがわかった. 4.アルケンの求電子的ホスフィノ化反応:新たに,AlCl3/DBPの組み合わせによりクロロジフェニルホスフィンにより1,1-ジフェニルエチレンを高収率でホスフィノ化できることを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初課題1「アルケンのアルキル化,ホルミル化の開発」については,ホルミル化で新たな良い条件が見つかり基質適用性が広がるなど良好な成果が得られた.一方,アルキル化では収率・適用性ともに望ましい結果が得られなかったが,塩基として用いるホスフィンの種類について検討するなかで,クロロホスフィン類が求電子試薬となってホスフィノ化が進行することがわかった.この反応について検討したところ,1,1-ジフェニルエチレンのホスフィノ化が高収率で進行した.このことは,アルケンのヘテロFriedel-Crafts反応の開発に期待が持てる重要な知見である. 当初課題2「触媒的Friedel-Craftsアシル化・アルキル化」については,R2年度開始時点で見込まれた官能基許容性,塩基の役割の考察が順調に進んだが,1,1-ジアリールエチレン類の反応について課題が残っている. 以上のように,計画とは違う方向に進んだところもあるが,概ね順調な進捗状況にあると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度も当初の研究計画を進めるとともに,R2年度に新たに得られた知見をもとに,以下の検討を行う. ホルミル化については引き続き適用性や機構考察を進めて成果をまとめる.触媒的アシル化については,アリルケトンを与える反応は効率的に進行するがビニルケトンを与える場合について収率が低い点について改善を図る.ホスフィノ化については,引き続き基質やホスフィンの適用性について検討し,新しいホスフィノ化反応を確立する. また,当初R3年度以降に計画していた塩基としてホスフィンを用いる反応についてアルキル化やアシル化で検討し,AlCl3/DBPによるアシル化も含めて塩基の役割について考察することについても検討する.
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Causes of Carryover |
既存の試薬および実験器具を用いて研究が遂行できたこと,および,参加を予定していた学会が中止またはオンライン開催となり,旅費を使用しなかったことで出費を抑えることができた.
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