2021 Fiscal Year Research-status Report
異なる置換基を有する多置換フルベンの合成とエレクトロクロミズム材料への応用
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20K05505
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
木下 英典 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20550007)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フルベン / エレクトロクロミズム / 位置選択的合成 / 物性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、パラジウム触媒を利用することによって、1,3-ビスシリル-6-アリールフルベンを高収率かつ完全な位置および立体選択性で合成する方法を見出した。この方法は、6位に多様なアリール基を有するフルベンを合成することが可能であり、またフルベンの1位に置換したシリル基は、アリール基へと変換が可能であるため、1位と6位に2種類の異なるアリール基が置換したフルベンも合成可能である。この方法で合成したフルベンのいくつかはエレクトロクロミック特性を有することがわかった。 しかし、本反応で合成した1位と6位に2種類の異なるアリール基が置換した1,6-ジアリール-3-シリルフルベンの3位に置換したシリル基はこれ以上の変換ができず、本研究の目的である1,3,6-トリアリールフルベンの合成が不可能であった。そこで我々は、(1Z,3E)-1,4-ジアリール-1-ブロモ-1,3-ブタジエンを出発物質とし、Pd 触媒存在下、シリルアセチレンと分子間反応し、続いて分子内反応を連続的に行うことにより3,6-ジアリール-1-シリルフルベンが合成できるのではないかと考え、実際に検討を行った、その結果作業仮説通り目的の3,6-ジアリール-1-シリルフルベンが中程度から高収率で合成できることを明らかにした。また、基質である(1Z,3E)-1,4-ジアリール-1-ブロモ-1,3-ブタジエンの合成法も検討し、1,4-位にそれぞれ異なったアリール基を導入することにも成功した。この結果は、日本化学会春季年会にて口頭発表した。 現在合成した3,6-ジアリール-1-シリルフルベンの1位のシリル基をアリール基に変換すべく検討を行っている。 昨年度行っていた1,3-ビスシリル-6-アリールフルベンと1,6-ジアリール-3-シリルフルベンに関するエレクトロクロミズムの系統的な調査結果は、論文としてまとめ受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である1,3,6-位にそれぞれ異なったアリール基を導入したフルベン合成に向けて、現在入手可能な基質からダイレクトに3,6-ジアリール-1-シリルフルベンが合成できることを明らかにしている。残る1位のシリル基をアリール基に変換できれば目を達成できることになり、おおむね順調に進展していると言える。 また、1,3-ビスシリル-6-アリールフルベンと1,6-ジアリール-3-シリルフルベンに関するエレクトロクロミズムの系統的な調査結果により、正負両電圧印加時に顕著なエレクトロクロミック特性を示すことが明らかになり、フルベンの置換基を替えることによりエレクトロクロミック特性を調整できることを明らかにし報告した。この観点からも合成だけでなく物性に関する研究も順調に進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
パラジウム触媒存在下、シリルアセチレンと(1Z,3E)-1,4-ジアリール-1-ブロモ-1,3-ブタジエンからダイレクトに3,6-ジアリール-1-シリルフルベンが位置選択的に合成できた。今後、残る1位のシリル基をアリール基に変換することを目指す。現在檜山カップリングによりシリル基をアリール基に変換することを軸に検討を行っているが、この方法が不可能な場合には、シリル基以外の基、例えばゲルミル基などを導入したフルベンを合成し、アリール基への変換を目指す。 また、パラジウム触媒を用いた反応では、アリール基の置換基により収率が低下するものが見受けられる。そこで、パラジウム触媒の代わりに水素化ジイソブチルアルミニウムを用いたフルベンの新規合成法の開発を行い、種々の置換基を有するフルベンの合成法開発も行う。 上記反応で得られたフルベンのエレクトロクロミック特性についても調査を行い、色の違いや電圧と色調変化に関する相関性も調査する計画である。
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Causes of Carryover |
日本化学会 第102 回 春季年会参加のための学会参加費、および交通費を計上していたが、新型コロナウイルス禍によるオンライン開催となったため、当該経費の執行を行わなかったため。 執行できなかった予算については、次年度の学会参加費に充てる他、有効な科研費活用を鑑みて、学会参加に支障のない範囲で反応試薬等の消耗品の購入費に充てる計画である。
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Research Products
(2 results)