2020 Fiscal Year Research-status Report
Generation of Benzenes as Nucleophiles in the Nucleophilic Substitutions and Its Applications
Project/Area Number |
20K05519
|
Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
上野 聡 東京工科大学, 工学部, 講師 (50514139)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | パラジウム触媒 / アリル化 / トリメチルホスフィン / パラ位 / 位置選択的 / 炭素ー水素結合官能基化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではベンゼン環においてある置換基に対してパラ位で位置選択的に反応が進行する反応の開発をおこなっている。2020年度は、シアノメチルベンゼンと酢酸アリルとの反応において、さまざまな反応条件について検討してきた。具体的には触媒や配位子、塩基、溶媒、温度などである。結果的に、パラジウム触媒とトリメチルホスフィン配位子、塩基としてフッ化セシウム、溶媒としてtert-アミルアルコールを用いた場合に、効率よく反応が進行することを見出した。この反応では、当然のこととして辻ーTrost型のアリル化反応の進行も予想されたが、興味深いことに、パラジウムに対して2当量のトリメチルホスフィン配位子を用いた場合に、位置選択的にシアノメチルベンゼンのパラ位でアリル化反応が進行した。 この反応では、原料からパラ位アリル化体とα位アリル化体とパラ位とα位の両方のアリル化体が生成するが、これらを明確に分離することは2019年度の研究環境では不可能であった。2020年度は本研究において購入した機器を用いてさまざまに条件検討を行ったところ、これらの混合物から目的生成物のみを迅速で簡便に分離に成功した。 さらに、シアノメチルベンゼンのα位の置換基効果についても検討した。その結果、メチル基やエチル基、ベンジル基、ブチル基では問題なく目的の反応が高選択的に進行したが、イソプロピル基など二級のアルキル基をもつ基質を用いた場合ではその嵩高さにより反応の進行が著しく遅くなり、目的生成物の収率も低収率となってしまった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は反応条件について様々に検討して目的の反応を効率的に進行させることを予定しており、その内容については、想定外のこともあったがさまざまな検討によって達成することができた。また、単離の方法については特にさまざまな問題に直面したが、本研究費で購入した機器を駆使して解決することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度にベンゼン環のパラ位の炭素ー水素結合を選択的にアリル基に変換することに成功した。2021年度はこの反応の基質適用範囲について検討していく。単離方法についても確立できたので予定どおりに円滑に研究を遂行できるものと考えている。2021年度は、シアノメチルベンゼンや酢酸アリル以外の官能基においても検討を行うことで、ベンゼン環の炭素ー水素結合を官能基化する新しい手法としての反応性を探索していく。
|
Causes of Carryover |
2020年度は、有機化合物の単離のために大型機器を購入することを検討して、前倒し請求を行った。今回生じた次年度使用額は、この前倒し請求を行った際に当初予定していた金額よりも抑えることができたために生じた金額である。2021年度は本研究において基質適用範囲の検討を行うため、その際に必要になる消耗品の購入にあてる。 2021年度は基質適用範囲の検討を中心に行う。これにより、薬品や溶媒、ガラス器具などの消耗品を中心に購入する。さらに、これらの研究成果を発表するために必要な経費にも充てる。
|