2022 Fiscal Year Research-status Report
高度反応制御技術の開発によるフラーレン誘導体の選択的合成
Project/Area Number |
20K05522
|
Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 貴敏 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究部長 (60416295)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩井 利之 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (20416291)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | フラーレン / メタノフラーレン / 選択的合成 / 硫黄イリド / 有機薄膜太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
一置換フラーレン誘導体のPCBMは、有機薄膜太陽電池のn型半導体材料、および、ペロブスカイト太陽電池の電子輸送材料の鍵となる化合物であり、実用的製法の確立が切望されている。申請者らは、これまでにフラーレン誘導体の合成法について独自にスルホニウム塩の脱離基となる硫黄原子(S)上の置換基を調整することにより、フラーレンC70に対する選択的付加反応を開発した。これらの知見を利用して、フラーレンC60においてもスルホニウム塩の置換基が選択性に及ぼす影響について明らかとすることを目的として検討を行った。そこで付加前駆体として置換基を有するスルホニウム塩の合成を計画した。スルホニウム塩の合成は、スルフィドと臭化4-フェニル吉草酸メチルとの反応により合成される。各種スルフィドは、対応する有機ハロゲン化物と硫黄源を作用させて合成を行った。硫黄上の置換基として、アルキル鎖長がフェニルブチル基、ベンジルオキシエチル基、フェノキシプロピル基を有するスルホニウム塩を用い室温での反応を行ったところ、得られたフラーレン誘導体の化学収率が低い結果であった。上記スルホニウム塩に加え更に長い鎖長であるフェニルペンチル基、および、ベンジルオキシプロピル基を有するスルホニウム塩を用い、0℃での反応をおこなった場合には、化学収率が向上したが、モノ付加体とビス付加体の生成比率が低下することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
付加前駆体となるスルホニウム塩において分子内に鎖長の異なるスルフィドを有する化合物を合成において、各種脂肪族ハライドからスルフィド類を合成した。スルホニウム塩を合成する際に銀塩の存在下、スルフィドと臭化4-フェニル吉草酸メチルを作用して合成するが、各種試薬の等量を最適化することにより純度の良くスルホニウム塩を調製することができた。得られたスルホニウム塩を利用してフラーレンとの反応を行うことができた。しかしながら、スルホニウム塩の硫黄上のアルキル鎖長と得られたフラーレン誘導体の選択性への効果が得るに至っておらず、進捗状況はややおくれていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
分岐を有する鎖長の異なる各種スルフィドを合成し、付加前駆体であるスルホニウム塩の合成を行う。また、フラーレンとの反応においては、反応温度・時間・溶媒・添加剤等の詳細な検討を行い、フラーレン誘導体の選択性の向上に与える条件検討を進めていく。
|
Causes of Carryover |
新規スルホニウム塩の合成計画において、鎖長の異なる各種スルフィドを合成できた。さらに各種置換基で分岐鎖の異なるスルフィドについても合成を進めていくため、原料のボトムアップが必要である。また、合成されるスルホニム塩はフラーレンとの反応を計画しており、フラーレンなどの試薬等の消耗品として支出する予定である。
|