2022 Fiscal Year Annual Research Report
イオンペア形成に立脚したイリジウム増感剤の高機能化
Project/Area Number |
20K05525
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
滝沢 進也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (40571055)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | イリジウム錯体 / 光増感剤 / イオンペア / 励起エネルギー移動 / りん光 / 静電相互作用 / ベシクル / 二酸化炭素還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
イリジウム(Ir)錯体は、様々な光反応の増感剤として機能することが知られている。しかし、優れた可視光捕集能や高耐久性などの特長を同時に満たすIr錯体の分子設計指針は明らかになっていない。さらに水への溶解度が低く、環境調和型反応への応用に課題を残している。本研究は、水中で形成する人工脂質二分子膜にアニオン性とカチオン性Ir錯体のイオンペアを導入し、励起エネルギー移動に基づいてそれぞれの欠点を補わせることでIr増感剤の機能を向上させることを目指した。 まず、可視光吸収能に優れるが光安定性に乏しいIr錯体をアニオン、可視光捕集能には乏しいが比較的安定な光増感剤として知られるIr錯体をカチオンとするイオンペアを合成した。アニオン性錯体を構成する配位子はクマリン6とオロテート、一方のカチオン性錯体を構成する配位子は1-フェニルイソキノリンとビピリジル誘導体を選択した。合成したイオンペアのクロロホルム中における発光スペクトルと発光量子収率を詳細に解析した結果、アニオンからカチオン部位への三重項励起エネルギー移動が高効率(約90%)で起こることが分かった。さらに、このイオンペアを両親媒性分子から構成される人工脂質二分子膜(ベシクル)に取り込ませたところ、クロロホルム中と類似した発光特性を示した。すなわち、膜中でも静電相互作用による会合状態を保っており、同様のイオンペア間励起エネルギー移動が起こることが示唆された。最終年度には、これをRe分子触媒とともにベシクル膜に取り込ませ、アスコルビン酸イオンを電子供与体とする光触媒的CO2還元反応を行った。その結果、イオンペアは光増感剤として効果的に機能し、還元生成物COを生成した。さらに、対照化合物としてのアニオン性Ir錯体を単独で用いた反応よりもアニオン部位の分解が顕著に抑えられることが判明し、本手法の有効性が実証された。
|
Research Products
(1 results)