2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Molecular Transformation Mediated by Multinuclear Complexes of Low-Valent First-Row Transition Metals
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20K05527
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
畑中 翼 大阪大学, 理学研究科, 助教 (80595330)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小分子活性化 / 第一遷移系列元素 / 多核錯体 / 低原子価 / C-H結合活性化反応 / C-H結合修飾反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、窒素分子などの不活性な小分子の修飾反応を、第一遷移系列元素を中心金属として有する多核錯体を用いて行うことを目的に研究を展開している。2年目となる本年では、初年度に合成法を見出した錯体の反応探索を行いつつ、新奇な多核錯体の合成も引き続き行った。バナドセンやクロモセンのビスアミド配位子を有する鉄およびコバルト錯体に関しては、低原子価種へと誘導することで高い反応性が付与できることが明らかとなり、溶媒として用いたTHFやトルエンとすらも反応することがわかった。大環状配位子を用いた検討では、二核鉄錯体および二核銅錯体を合成し、得られたそれぞれの錯体を用いて酸素分子活性化反応を行った。結果として、どちらの錯体も酸素分子の還元が進行し、さらに二核鉄錯体では基質のC-H酸素化反応が可能なことを、二核銅錯体では基質のC-H結合からの水素原子引き抜き反応が可能なことを見出した。いずれも生体内の酵素で見られる反応を模倣するものであり、また鉄の成果に関しては報告例が限られるものであるため、酵素反応の機構を解明する上で貴重な基礎的知見となる。電子供与性のアミド配位子を持つ低原子価コバルト錯体の反応探索では、オレフィンの触媒的水素添加が可能であることを見出した。また、有機アジドとの反応では、C-H結合からの水素原子引き抜きを基点とするC-CおよびC-N結合形成反応を達成した。第一遷移系列元素を用いた反応開発は、国策として取り組まれている「元素戦略」に大きく寄与するものであり、以上で見出した分子変換反応は重要な成果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者独自の配位子を用いて、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅などの第一遷移系列元素を含む異種および同種金属多核錯体を数多く合成し、それらを還元することにより反応活性な低原子価種へと誘導することができた。その中のいくつかの錯体に関しては、磁気的性質、電気化学的性質を調査するとともに計算化学による評価も行った。また得られた錯体を用いて窒素分子、酸素分子、水素分子、有機基質のC-H結合などの活性化を達成することができた。さらに上記で得られた知見に基づいて、量論的または触媒的基質変換反応も開発した。以上の成果は、当初の研究計画にて見込んでいたものを大幅に上回るものである。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間で十分な錯体のライブラリー構築でき、また新奇な反応の開発を行うことができたため、3年目では触媒反応の開発に研究の重心を移す。特に窒素分子変換反応、単純アルカンの修飾反応に注力する。また、天然の金属酵素の行っている反応の機構解明とも関連するため、見出した反応の詳細な解析も行う予定である。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに使い切ることができた。生じた差額は次年度分の試薬やガス代として支出する予定である。
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Research Products
(20 results)