2022 Fiscal Year Annual Research Report
混合DFT法を越えた高精度計算によるMn錯体としてのCaMn4O5の電子状態解析
Project/Area Number |
20K05528
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川上 貴資 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (30321748)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光合成PSII / OEC錯体 / Kokサイクル / 分子軌道法 / 強相関電子系 / LPNO-CC手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成システム(PSII)における太陽光を用いる水分解反応は、Mn錯体と高度にカップリングしており、それを触媒するのが「CaMn4O5クラスター」である。これは強相関電子系に属しており、その電子物性・機能発現・反応性の解析には高精度量子化学計算が必須である。しかし、分子軌道法での高精度計算の王道と言われるCC法やMR-CI法は、その適用範囲が比較的少数原子系に限定されており、この巨大分子系に適用することは、計算機資源や計算時間などの制約から極めて困難である。その理由で、電子相関を交換相関汎関数に繰り込んだDFT法、特にHybrid-DFT法が、現在までに数多く行なわれた。しかし、手法内パラメータを順次変更すると、中間体の相対安定性が大幅に変動するため、水分解反応機構の解明には予見性を備えたアプローチが必須であり、その限界をこの研究を遂行することで突破する。
太陽光を利用する水分解反応を触媒するCaMn4O4XYZWクラスターの分子構造は、実験により解明されており、ここでのX, Y, Z, Wはクラスターに配位している水(H2O)あるいはその酸化誘導体(OH-, O2-)などである。しかし、実験では水素原子の位置は見えないため、理論計算で詳細な物性データを得る。
特に本年度では、Kokサイクル(S0, S1, S2, S3, S4)の各状態の高精度な解析を行うために、より大きい分子サイズでのUB3LYP計算と、強相関電子状態計算手法としてDLPNO-CCSD(T)法を実行してきた。後者では、その近似レベルの系統的な解析のために、縮約するLPNO数と計算精度の関係を調べた。Loose(荒い)・Normal(普通)・Tight(微細)の3つのレベルで計算することで、CC計算での計算コストと精度のトレードオフ関係を詳細に吟味することができた。
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Research Products
(15 results)