2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of Chemometrics Method using Near-IR Absorption of Lanthanide Complex
Project/Area Number |
20K05529
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
篠田 哲史 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00285280)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 近赤外分光 / ランタノイド / 多変量解析 / キャスト膜 / 固体センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
ランタノイドイオンが配位子場の変化によって示す微細分裂した近赤外吸収線を近赤外分光により測定し,そのパターン認識(多変量解析)を利用した基質認識法についての研究を行った.今年度は,Ybイオン以外にもランタノイドイオンの探索範囲を広げ,近赤外分光法に適用可能なイオン種の決定,およびその感度や配位子場に対する応答性を検討した.その結果.本分析方に利用可能なランタノイドイオンが複数存在することが確認できた.2種類のランタノイド錯体の応答を組み合わせたデータベースを構築することにより,アミンの認識精度が向上することも実証した. 自己組織化膜を形成するランタノイド錯体をガラス基盤上にキャストして固定化したものを利用した場合にも,溶液測定と同様の感度が得られ,ゲスト基質となるアニオンを添加した際に明確なスペクトルパターン変化が観測されたことから,研究計画を前倒しして固体センサーへの応用研究に着手した.固体分析を利用することにより溶媒による近赤外吸収の妨害がなくなるため,検出可能領域が広がるだけでなく,従来困難であった水溶液中の基質を検出できる可能性が高まった.この手法の一般性を確かめるため,これまで利用してきたランタノイド錯体をガラスや紙などの固体上に固定化する手法や,それにより得られるスペクトルのシグナル感度やゲスト基質に対する応答性を調べる基礎研究を開始した.近赤外光の高い物質透過性を反映して,様々な基板が利用できることを見出し,溶液測定とは異なる試料の分析に応用できることを明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19による影響で全学生が入構できない期間があったり,滞在時間に制限が設けられたことによる研究時間の確保がやや困難であったこと,また実験を担当していた学生が事情により休学する状況となったことから,予定していた研究を進めることができなかった.また学会等への参加がほぼ不可能となったため,出張費などは不使用となった.
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目以降に計画していたランタノイド錯体の固定化および固体センサーによる水溶液分析への展開が視野に入ったため,素材の検討や従来不可能であった基質に対する応答について探索を行う予定である.今年度内には基板や膜生成法の最適化を完了し,分析感度や再現性を得るための工夫を行う.基質に対する応答性を詳細に解析し,定量性や検出可能範囲の決定を行う.また固体センサーである利点を生かし,繰り返し測定や応答速度の向上などの実現を図る.他種類のランタノイド錯体を固定化した基板を作成し,多彩な基質応答情報を迅速に得る分析システムを構築する. 年度の後半は,ランタノイド錯体の分子構造を多様化し,より精度の高い基質認識の実現を図るとともに,空孔を有する固体材料や膜構造を有する固体材料などについてもセンサー能を明らかにする. 学会参加については現時点でまだ不透明であるが,オンライン学会などにも積極的に参加し,成果を発信する.
|
Causes of Carryover |
研究報告にも記載した通り,研究時間の減少および担当学生の休学により,予定していた研究計画が進められなかった.また合成実験を中心とした計画を立てていたが,ランタノイド錯体の固定化に目処がついたため,こちらを先に進めることとしたため,試薬類の購入量が予定より少なくなった.また出張予定がすべてキャンセルとなったため,旅費の執行が0となった. 多額を次年度に回すこととなったが,現在分析に使用している装置の光源が経年劣化して交換が必要となったため,新年度の早い時期に装置の部品交換および,ソフトウェアの更新を行うため,その費用に充当することとした. 合成実験については年度後半から精力的に行う予定であり,当初予定していた消耗品費は予定通り執行する.
|