2020 Fiscal Year Research-status Report
超臨界二酸化炭素を用いたイオン液体からの溶質分離システムの開発
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20K05547
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
大橋 朗 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50344833)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イオン液体 / 超臨界二酸化炭素 / ソルバトクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン液体(IL)は低蒸気圧・難燃性等の特性を持ち、抽出分野において有機溶媒に代わる溶媒として注目されている。しかし、低蒸気圧であるためILから抽出物質を回収することが困難である。そこで超臨界二酸化炭素(SC-CO2)抽出法を用い、IL から抽出物質を回収する方法が研究されている。抽出の際、多量のCO2がIL に溶解することが知られている。しかし、それによるILへの影響は研究されていない。そのため本研究では、ILへの多量のCO2溶解が二相間抽出挙動に与える影響をソルバトクロミック色素から極性を評価できるKamlet-Taftパラメータを用いて検討した。 ILにソルバトクロミック試薬一種を溶解させ、3時間減圧乾燥を行った。乾燥後、容積3 mlの耐圧セルへ1.5 ml加えCO2を導入し、一定時間攪拌・静置後UV測定を行った。CO2の圧力は0-20 MPa、温度は318 Kとした。ILには炭素鎖の異なるイミダゾリウム系三種及び、アニオンの異なる同系一種を使用した。 [C4mim][Tf2N]に溶解した色素のCO2 0 MPa下と20 MPa下の吸収スペクトルを比較したところすべての色素においてCO2溶解によるλmaxの大きな変化は得られなかった。ILは特性の1つとして極性部分と非極性部分でドメイン構造を形成することが報告されている。そのため、今回用いたソルバトクロミック試薬とCO2が異なるドメインに溶解しているために影響が出なかったことが考えられる。今回の結果では、ILへのCO2溶解が二相間抽出挙動に与える影響は確認できなかった。そのため、抽出物質が今回用いたソルバトクロミック試薬のような極性物質である場合、SC-CO2/IL抽出においてILへの多量のCO2溶解による二相間抽出挙動への影響は考慮する必要がないほど小さいということがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年3月から6月初旬にかけてCOVID-19の影響で研究室での活動ができない状況であった。研究室再開後も人数や時間制限を設けての活動が続き当初の予定よりも研究が進まなかった。それでも二酸化炭素が溶解したイオン液体の物性に関する意義ある知見を得られており、制限があった中では一定の成果が出せたと考えている。今年度も当初予定していた通りの活動ができるか予断を許さない状況だが、研究に従事する学生数を増やすなどして、研究進行が予定に近づくよう計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はSC-CO2/イオン液体間の溶質の分配挙動に及ぼす諸因子(圧力・温度・水分量)の影響の解明を試みる.SC-CO2/イオン液体間の分配挙動測定は,以下のように行う.上部・下部に2組のサファイヤ製観察窓を取り付けた耐圧性二相間分配観測セル(容積:3.0 cm3,光路長:1.0 cm)に溶質を含むイオン液体を1.5 cm3加える.その後,セルを加温した状態でシリンジポンプを用いて加圧したCO2を観測セルに送り込む.マグネティックスターラーで攪拌・整置後,SC-CO2相(上部)とイオン液体相(下部)の吸収スペクトルを測定し,溶質の分配比を求める.圧力(CO2密度)や温度を変化させて,これらの因子がSC-CO2/水間の溶質の分配比に及ぼす影響を明らかにする.溶質にはこれまで有機溶媒/水系やSC-CO2/水系での解析に用いてきた8-キノリノール誘導体やβ-ジケトン類およびその金属錯体を用いる予定である.配位子の違いが分配挙動に与える影響や有機溶媒/水系やSC-CO2/水系との違いについて検討し、SC-CO2/イオン液体間の分配挙動の特異性を明らかにする.
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で参加予定していた学会がオンライン開催となり、計上していた旅費が全く使用されなかったため、代わりに物品費として使用した.7,045円の余剰金が発生したが、少額であるため今年度の助成金と合わせ、消耗品購入に使用する予定である.
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