2021 Fiscal Year Research-status Report

超臨界二酸化炭素を用いたイオン液体からの溶質分離システムの開発

Research Project

Project/Area Number	20K05547
Research Institution	Ibaraki University
Principal Investigator	大橋朗茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50344833)
Project Period (FY)	2020-04-01 – 2023-03-31
Keywords	イオン液体 / 超臨界二酸化炭素 / ソルバトクロミズム / 分配 / 溶媒抽出
Outline of Annual Research Achievements	イオン液体(IL)は低蒸気圧・難燃性等の特性を持ち、抽出分野において有機溶媒に代わる溶媒として注目されている。しかし、低蒸気圧であるためILから抽出物質を回収することが困難である。そこで超臨界二酸化炭素（SC-CO2）抽出法を用い、IL から抽出物質を回収する方法が研究されている。前年度の研究結果より、イオン液体に溶解した多量なCO2と溶質の間にはほとんど相互作用が生じないことが分かった。本年度はイオン液体と超臨界二酸化炭素(SC-CO2)間の溶質の分配平衡に及ぼすCO2圧力の影響を測定した。測定は以下の手順で行った。サファイヤ製観察窓を取り付けた耐圧性二相間分配観測セル（容積：3.0 cm3，光路長：1.0 cm）に溶質Co(acac)3を含むイオン液体を1.5 cm3加える。その後，セルを加温した状態でシリンジポンプを用いて加圧したCO2を観測セルに送り込む。マグネティックスターラーで攪拌・整置後，SC-CO2相（上部）とイオン液体相（下部）の吸収スペクトルを測定し，溶質の分配比を求める．圧力(CO2密度)や温度を変化させて，これらの因子がSC-CO2/水間の溶質の分配比に及ぼす影響を明らかにした。Co(acac)3のSC-CO2への分配はCO2圧力が上昇するにつれて高くなった。分配比とCO2密度の関係からCo(acac)3に対するCO2分子の溶媒和数を見積もったところ、以前SC-CO2/水系から求めた値と近くなった。また、SC-CO2/IL間の分配定数は、SC-CO2/水及びIL/水系の分配定数から見積もられた値と近いものとなった。この結果よりSC-CO2/IL間の溶質の分配比はSC-CO2/水及びIL/水系の分配比を求めることで予測可能であることが示唆された。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason コロナが以前に比べてだいぶん落ち着いたことにより、実験時間を多く確保することができた。SC-CO2/IL間の分配挙動に対する諸因子の影響について明らかにすることができた。応用面への研究はまだ十分できていないが基礎的な研究はかなり進めることができた。
Strategy for Future Research Activity	今年度は昨年度の研究に引き続きSC-CO2/IL間の溶質の分配挙動に及ぼす諸因子（圧力・温度・水分量）の影響をより詳細に解明を試みる。溶質やイオン液体の構造の違いが分配挙動に与える影響や有機溶媒/水系やSC-CO2/水系との違いについて検討し、SC-CO2/イオン液体間の分配挙動の特異性を明らかにする。得られた結果に基づきILからSC-CO2を用いた溶質の回収方法のモデル定昇を確立する。
Causes of Carryover	コロナの影響で当初予定していた学会への参加を取りやめたため旅費の支出がなかった。その分物品費として前倒しにして必要な試薬などを買い足そうとしたが、世界的な経済活動の低下などにより発注した薬品が手に入らず発注をキャンセルされるなどして想定したよりも多くの残金となった。残金は本年度の研究で使う試薬などで使用する予定である。