2020 Fiscal Year Research-status Report
空隙層に近赤外蛍光色素を内包するラトル型シリカナノ粒子の合成と細胞イメージング
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20K05555
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
中原 佳夫 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (10432600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 淳 和歌山大学, システム工学部, 講師 (50467502)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シリカナノ粒子 / 近赤外蛍光色素 / 物理吸着 / タンニン酸 / シード媒介成長法 / 水分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
実用性に優れる蛍光細胞イメージング剤の作製を目指して、近赤外蛍光色素を物理吸着で内包するタンニン酸被覆シリカナノ粒子の開発を行った。従来法では、近赤外蛍光色素は主に化学結合によってシリカナノ粒子に導入されていることから、本研究では物理吸着で導入することを試みた。シード媒介成長法に従って、粒径が40 nmのシリカナノ粒子をシード粒子として用い、L-アルギニンを触媒とし、シリカ源であるテトラエトキシシランと近赤外蛍光色素としてオキサジン725を加え、70℃で24時間反応させた。このとき、オキサジン725は正に帯電していることから、負に帯電するシリカナノ粒子の表面に静電相互作用によって吸着し、この状態でゾル-ゲル重合が進行することで、オキサジン725は物理的にシリカネットワークの中に閉じ込められた。さらに、オキサジン725内包シリカナノ粒子の水分散液を室温で撹拌しながら、塩化鉄(Ⅲ)、タンニン酸の順に添加することで、粒子表面をタンニン酸-鉄イオン錯体で被覆した。X線光電子分光測定より、280 eV付近のC 1s由来のピークが増大し、710 eV付近にFe 2p由来のピークが新たに生じていた。これらの結果は、ポリフェノール類であるタンニン酸が三価の鉄イオンとの架橋を介して粒子を被覆したことを示している。走査型電子顕微鏡により粒子の平均粒径を求めたところ、オキサジン725を固定化後に15 nm、タンニン酸被覆後にさらに15 nm程度粒径が大きくなっていることがわかった。このナノ粒子をトリス塩酸緩衝液に分散させ、動的光散乱法により流体力学直径を求めたところ、実際の粒子サイズよりわずかに大きい値を示したことから、本研究で開発したタンニン酸被覆オキサジン725内包シリカナノ粒子は水分散性に優れていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、空隙層に近赤外蛍光色素を内包するラトル型シリカナノ粒子を合成し、細胞イメージング剤に応用することであるが、1年目でその一つ前の段階である近赤外蛍光色素(オキサジン725)を物理吸着で内包するタンニン酸被覆シリカナノ粒子まで合成できた。従って、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究で得られたタンニン酸被覆オキサジン725内包シリカナノ粒子の特性評価を行うと共に、シリカ層を部分的にエッチングすることでラトル型ナノ粒子へと変換し、蛍光細胞イメージング剤として応用することを目指す。また、オキサジン725以外の近赤外蛍光色素のシリカナノ粒子への固定化についても試みる。エッチング方法としては、通常は水酸化ナトリウム水溶液を用いて室温で行われているが、予備検討において、水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合では室温においてもシリカ層を削り過ぎてしまうことがわかってきたので、アンモニア水溶液もしくは純水を用いて行う。これらの水溶液を用いる場合には、室温ではなく加熱してシリカ層のエッチングを行う予定にしている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響より、研究を思うように進めることができなかった。従って、物品費は大幅に次年度に繰り越しとなった。さらに、学生不在の期間が長かったため、人件費・謝金は全額次年度に繰り越しとなった。また、参加を予定して学会が中止またはオンライン開催となったため、旅費を全く使用することができず、全額次年度に繰り越しとなった。次年度の使用計画として、今年度に繰り越した分(物品費、人件費・謝金)を全て使用する予定ではあるが、新型コロナウイルスの感染が治まらず十分に研究が進められない場合は、その一部を次々年度に繰り越す可能性もある。また次年度は、今年度に参加する予定であったが延期となった国際学会(Pacifichem 2021、ホノルル)に参加する予定であるが、学会が中止またはオンライン開催になった場合は旅費が不要となるため、その分を次々年度に繰り越す予定である。
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Research Products
(1 results)