2021 Fiscal Year Research-status Report
ラマン分光法を用いたiPS細胞及び分化誘導細胞の非破壊,非侵襲評価法の確立
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20K05556
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
石垣 美歌 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (60610871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 成 香川大学, 医学部, 教授 (10325334)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ラマン分光法 / iPS細胞 / 分化誘導 / エリスロポエチン産生細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトiPS細胞からエリスロポエチン産生細胞への分化誘導過程の4段階(I, II, III, IV)において細胞をホルムアルデヒドにより固定し,ラマンイメージングデータを取得してスペクトル解析を行った。その結果,細胞の分化段階に応じてラマンスペクトルパターンが異なることが示された。まず,ステージIII, IVへと細胞が分化するにつれて,培養液中のジメチルスルホキシド(DMSO)が細胞に取り込まれる様子が確認され,エピジェネティクスの変化を引き起こすDMSOが細胞に影響を与えている可能性が示唆された。また,不飽和脂肪酸の濃度も細胞の分化とともに上昇する結果が得られ,分化段階に応じて脂質代謝が変化する様子も確認された。そして,ステージIIの細胞では,一時的に糖タンパク質の濃度が高くなる結果も示された。エリスロポエチンは,赤血球の生産を促進する糖タンパク質であり,エリスロポエチンを分泌するIII, IVのステージンの前の段階IIで,エリスロポエチンの原料となる糖タンパク質濃度が高くなることを示す結果が得られたことは,非常に興味深い。さらに,スペクトル解析で得られた結果を再現する結果を,ラマンイメージングにより可視化することに成功した。 本研究結果から,iPS細胞からエリスロポエチンへ分化する際の細胞内分子組成の変化をとらえることができ,分化段階に応じて時々刻々と変化する様子を捉えることができた。分化段階に特徴的な分子は,目的とする細胞の成熟度を判別する指標となる可能性がある。本手法は,iPS細胞の安定的,安全性を担保した細胞培養モニタリング技術への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ感染症対策のため,互いの研究機関への行き来が制限される中,培養中の細胞ではなく,固定細胞を分析する方針へと転換し,iPS細胞のエリスロポエチン産生細胞への分化誘導をラマン分光法により分析を進めることができた。細胞学的にも,非常に興味深い知見が得られ,間もなく国際雑誌へ投稿予定であり,おおむね順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,励起波長を変えてラマンデータを取得し,分析を実施する予定である。また,培養中の細胞を in situ で分析する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症対策のため,出張ができなかったため。
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