2020 Fiscal Year Research-status Report
超臨界水状態での真空紫外円二色性計測によるタンパク質等の分子構造解析手法の確立
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20K05559
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
田中 真人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (30386643)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分子構造 / 円二色性 / キラリティ / 光吸収 / 分光計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
円二色性は温度条件等による分子構造変化を簡便に追跡できる分光手法である。本研究は、高圧・高温条件で円二色性等分光測定が可能な光学セルの開発、分光計測システムの構築とその正確性の検証、アミノ酸などのキラル分子等の高圧・高温条件等での構造変化などの分析を目指す。これらにより、高温・高圧条件等での円二色性等分光技術の開発と、本技術の有機化学分野などにおける分光分析手法としての有用性の検証を目指すものである。 2020年度は、本研究の基礎となる高圧・高温条件に対応した分光計測用光学セルの設計と開発を主に行った。光学セルとして、セル本体を耐熱合金であるハステロイ合金で作製し、セルの部品間の締結にCシールを用いることなどで、仕様として最大圧力50メガパスカルまで耐圧があるものを設計した。またセルの内蔵ヒーターや温度コントローラー等を用いて、セルの温度を最大450℃まで昇温可能な仕様とした。これにより超臨界水条件である圧力22.1 メガパスカル以上、温度 374℃以上での分光計測を可能なセルを設計し、現在製作を進めている(本年夏ごろに製作完了予定)。本光学セルはガイドリング厚さを変更することで光路長を2ミリメートルから10ミリメートル間で変更できるようになっている。将来的にはより薄いガイドリングを用いることでより短い光路長(1ミリメートル以下)を目指す。光学窓として複屈折の生じないとされるYAGセラミックス窓を採用した。今後の評価等で窓の歪み等により円二色性の計測が困難と判断した場合、石英窓等の利用を検討する。なお本セルの利用時には断熱材を配置すること等で、測定者の火傷等を防ぐなどの安全対策を十分に行う。また本セルを用いて紫外~真空紫外領域での分光計測を行うための計測システムの構築を、既存の真空紫外円二色性スペクトル測定装置を基として進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本提案の基礎となる高圧・高温条件に対応した分光計測用光学セルの設計を行い、超臨界水条件(圧力22.1 メガパスカル以上、温度 374℃以上)での分光計測が可能な仕様のものを製作中であり、概ね順調な進捗となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは分光計測用光学セルの試験(温度・圧力等)、歪み等の評価を行い、紫外~真空紫外領域での分光計測システムへの組み込みを行う。その後、カンファスルホン酸などの円二色性の標準的試料、アミノ酸等のキラル分子、タンパク質やポリペプチド等のキラル高分子等の計測や構造解析を行う。別途分子軌道計算等による光吸収・円二色性等の理論的予測も行う。これらにより高温・高圧条件等における円二色性等分光分析によるキラル分子の構造解析手法の確立とその有用性の検証を行う。 セルの評価等で窓の歪みや割れなどの問題が生じた場合は、現在用いているYAGセラミクス以外の材質(石英など)の窓材の利用を検討する。
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Causes of Carryover |
既に"高圧光学溶液セルシステム" 198万円(税込)に関する調達契約が2020年度中に完了しているが、納品が2021年中のため、支出額に反映されていない。 残りの予算額は本セルの分光システムへの組み込み用部品等に用いる予定である。
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Research Products
(3 results)