2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel real-time abiotic stress detection method for plants to contribute increase of food production
Project/Area Number |
20K05572
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
呉 行正 福岡工業大学, 工学部, 教授 (70234961)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植物 / 物質輸送 / 溶存酸素 / 偏向 / 重金属ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的な人口増加によって人類は食料の増産だけではなく、CO2の濃度増加による地球温暖化や環境汚染問題にも直面している。植物は光合成により、人類に食料の提供だけではなく、CO2の固定や環境汚染物の除去等環境問題の解決に大いに貢献している。植物の生理活動は、二酸化炭素あるいは酸素の測定により評価される。植物に出入りする酸素の測定は従来で検圧法や明暗瓶法などで行われるが、植物の部位ごと(葉、茎、根など)における酸素の出入りの測定はできない。 本研究では、光一本で植物個体表面近傍のO2等の生理的活性物質の輸送過程を高感度in-situでモニタリングする新規計測法を開発し、さらに植物の非生物的ストレスの測定に応用した。生理的活性物質の輸送により、植物表面近傍で濃度勾配が存在し、それをレーザープローブ光の偏向で、また、植物表面近傍の溶存酸素の濃度は蛍光消光法により測定した。水草アナカリスをモデル植物として、また、Ru(II)錯体を蛍光ブローブとして用い、本法で水草の光合成過程、呼吸過程での物質輸送及び溶存酸素の濃度変化をモニタリングしたところ、光合成過程では溶存酸素の濃度が時間と伴に増加し、呼吸過程では溶存酸素が時間と伴に減少することを明らかにした。さらに物質輸送に起因するプローブ光の偏向も光合成過程と呼吸過程が逆の変化であることを明らかにし、本法の有効性を実証した。 さらに、本法を植物の重金属ストレスの測定に応用した。10-6MのCu2+やCo2+などの重金属イオンが存在すると、光合成過程でも植物近傍に溶存酸素が時間と伴に減少することを明らかにした。また、植物の葉、根、茎など部位ごとの溶存酸素の変化、物質輸送の変化も異なることを明らかにした。さらに、重金属イオンの濃度の影響も検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の通りに、①レーザープローブ光1本で植物表面近傍の物質輸送過程及び溶存酸素の濃度をリアルタイムin-situでモニタリングする新規計測法の確立、②この新規計測法を重金属イオンの植物への影響、すなわち植物の重金属イオンによるストレスの測定へ応用する可能性の検討を行った。結果として、本法は植物の新規計測として、重金属イオンによるストレスの測定に応用できる実験データを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通りに、葉、茎、根など各部位近傍の非生物的ストレスを含む環境ストレスへの応答をモニタリングし、植物の成長過程に有益な知見を得る。非生物的なストレスは①重金属イオンの影響、②生活排水に含まれている合成洗剤である界面活性剤などの影響、③富栄養化の原因物質であるリン酸塩や、硝酸塩の影響を含む。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの関係で、当初予定していた学会発表、研究打ち合わせがすべてキャンセルされ、計画していた旅費を執行できなかった。 使用計画としては、コロナウィルスが収束すれば、国内外の専門学会で研究成果を発表し、専門家と意見交換し、更なる発展計画を練ることに資する。また、コロナウィルスが収束できない場合は、計画していた旅費を部品購入に使い、より多くの実験ができるようにする。
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