2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of NMR probes for quadrupolar nuclei
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20K05574
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 雅人 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 上級研究員 (60392015)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 四極子核 / 広幅NMR / リンギング / 硫黄 |
Outline of Annual Research Achievements |
四極子相互作用による異方性と早い緩和によりNMRスペクトルが広幅化(NMR信号が短時間化)し、NMR測定が非常に困難となる。これは、高出力の励起信号の残余成分(リンギング)が、それに続くNMR信号を完全に隠蔽してしまうためである。本研究では、これに対処するためにリンギングを劇的に減らす分光計とプローブの開発を行っている。 今年度はリンギング対策に最適化された分光計の開発を行った。分光計については、SDR(Software Defined Radio)を用い、専用のハードウェアを用意することなくNMR測定に必要な機能をソフトウェアで記述する。リンギングを減らすための制御信号が生成できるようにソフトウェアの開発を行った。ただし、パワーアンプについては既存のものを使用した。 リンギングを減らすためには、送受信の切り替え回路(デュプレキサと呼称される)が重要であり、今年度はこれの開発に注力した。デュプレキサは、パワーアンプからの励起信号をプローブに送り、プローブからのNMR信号を受信回路に送る。この際、パワーアンプから受信回路への励起信号・ノイズの漏洩、プローブからパワーアンプへのNMR信号の漏洩を可能な限り小さくする必要がある。また、送受信の切り替え速度が速くかつリンギングが少ない必要がある。 これを開発するために高周波回路シミュレータを利用した。使用する素子はSパラメータを事前に測定しそれをシミュレーションに用いた。これらの結果をもとに実際にデュプレキサの開発を行った。開発ではノイズ対策と事前のシミュレーションとは最適周波数が異なるなどの困難があったが、必要な性能を持つデュプレキサの開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルスまん延により、他機関と共同しての研究開発や学会発表が困難になったものの、それ以外の点については順調に推移している。 初年度に計画したデュプレキサを含む分光計の開発はおおよそ完了している。デュプレキサについては、ノイズ対策に手間取ったものの最終的には十分な性能を持つものを開発できた。自作分光計については、さまざまな改良を行い、任意の励起パルスを使用することが可能となった。また、これと連動してリンギング回路の制御信号を生成することも可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、リンギング対策を組み込んだプローブの開発を行いたい。これまでに一部試作しているが、超伝導磁石のボアにおさまるように再設計を行う。さまざまな核種、周波数について検討を行いたい。 高温超伝導薄膜アンテナを用いた超高感度プローブの開発についても、本研究がどこまで適用可能か確認するための開発を進めていきたい。高温超伝導薄膜アンテナについては、送受信分離型とし、送信用銅アンテナと受信用超伝導アンテナをそれぞれ製作し、これらを完全に直交させることで高いアイソレーションを実現する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスまん延により、他機関と共同しての研究開発や学会発表が困難になったため予算の繰り越しが生じた。翌年度以降にこれらを実施したい。
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