2020 Fiscal Year Research-status Report
有機合成化学と抗体工学を基盤とする残留農薬検査キットの開発
Project/Area Number |
20K05583
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
岩佐 精二 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30303712)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 触媒的有機合成 / カルベン / イムノアッセイ / ハプテン / 残留農薬検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的は、抗原抗体反応を基本原理とする免疫学的測定法(イムノアッセイ)を利用した残留農薬分析法を確立し、簡便・廉価・迅速・高精度・自在な測定環境に対応できる等の特徴を有する残留農薬分析キットを提供することである。 イムノアッセイでは、標的化合物に対して特異的な抗体を用いるが、農薬は低分子であるため、それ自体を動物に直接免疫しても標的農薬抗体が得られない。そこで農薬のような低分子にはリンカーを導入し、巨大蛋白と結合させてマウス免疫することで標的農薬特異的な抗体を作製する。このときリンカー導入方法において触媒的有機合成法を用いる。ここで農薬はその多くが活性水素やハロゲンを含んでいることに特徴がある。これらの官能基性農薬の特徴に着目し、独自に開発した触媒を用いるリンカー導入方法(カルベンの触媒的NHおよびOH挿入反応等)を応用してハプテン群の合成が可能である。現在、触媒的炭素-炭素結合生成反応においてジアゾエステル類の触媒的カルベントランスファー反応においても優れたルテニウム系触媒を見出している。ルテニウム触媒であるRu-Pheoxは、酢酸基やリン酸基をリンカーとして導入が可能であり、申請者が開発して現在市販されるに至っている。 これらを基盤にさらに調整を行った結果、カルベンの触媒的NHおよびOH挿入反応のみならずC-H挿入反応も見出し、有機合成的にも有用であることを立証した。さらにこ、ニテンピラムを標的とするハプテン合成に成功し、相当する抗体作成とその標的農薬のセンシングに至った。成果は、学術論文として触媒開発とその応用関連で4報と残留農薬検査関連で2報を報告した。今後はさらにキャベツ用標的農薬のハプテン合成とその抗体作成に向けて研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
抗原抗体反応を利用した残留農薬検査キットの作成に関して、標的農薬のハプテン合成は、その標的農薬の抗体を得るために必須である。これらの合成に有機合成化学は主導的な役割を演じることになる。有機合成の反応機構は通常、イオンやラジカルの機構を経由するがこれらの既存の反応中間体でなく、最も活性が高いカルベンを反応中間体とする触媒反応を制御することに成功し、今まで水酸基やアミノ基などの官能基への挿入反応だけでなくCーH結合への隣家の導入が可能となった。これらの有機合成的進展と既存の有機合成技術を背景に標的農薬の抗体作成用ハプテン化合物の合成に成功し、結果としてニテンピラム、ボスカリド、アゾキシストロビンなどの標的農薬特異的抗体を得るためのハプテン合成に成功した。得られた抗体は高感度で相当する標的農薬をセンシングできることが判明した。このような理由から当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
イムノアッセイ法(免疫的化学測定法)は原理的に生物機能としての抗原抗体反応を利用するゆえに微量で特異的に標的物質の定性や定量が可能である。さらに分析に場所を選ばないで測定を行うことができる点、すなわち廉価、迅速、自在な分析環境を提供しうる点において既存の総合的機器分析システムに比べて大きな利点がある。また使用有機溶媒も劇的に減少することができる。 今後はさらに標的農薬のハプテンおよび標的農薬抗体も未知であるキャベツ用農薬のハプテン合成とその抗体作成に向けて研究を進めていく。具体的には、1)ハプテン合成、2)標的低分子農薬である有機化合物をアルブミンやスカシ貝等の担体蛋白質に共有結合させ得られたハプテン群は堀場製作所(株)に依頼しマウス免疫により抗体作成を行なう。(担当 岩佐令和3年4月ー令和3年10月)(3)得られた抗体はモノクロナール抗体としてイムノクロマトキット法にセットアップする。(担当:岩佐、堀場製作所(株)令和3年10月ー令和4年3月)(4)上記(1)ー(3)のプロセスにより農薬ハプテン合成ータンパクとの融合ーマウス免疫ー抗体作成ー農薬分子センサー化を行う。(担当:岩佐、令和4年4月ー令和5年3月)成果は随時、特許、論文、学会発表などを行い、情報を発信していく。
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Causes of Carryover |
当初の計画より研究の進展が早く、消耗品として試薬や測定費用などを計上する必要が生じたため。
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