2021 Fiscal Year Research-status Report
石炭燃焼由来バナジウムと鉛同位体比を用いた人為エアロゾルの精密発生源識別
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20K05585
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山本 祐平 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (30571228)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遠隔山岳地域 / 人為エアロゾル / 微量元素 / Pb同位体比 / 固相抽出法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は山岳地域における降雪試料に含まれる微量元素の濃度比(V/Pb比、Pb/Cd比、V/Ni比)およびPb同位体比を用いて、人為エアロゾルの高精度なトレーサーの確立を目指している。 本年度は山岳地帯における冬季湿性沈着試料として、四国の遠隔山岳地域1地点(高知県大豊町梶ヶ森)、都市近傍山岳地域1地点(徳島県三好市アザミ峠)において降雪4試料、樹氷1試料を採取した。また昨年度冬季湿性沈着試料が十分に得られなかった代替として、夏季湿性沈着試料を四国の遠隔山岳地域2地点(高知県大豊町梶ヶ森、広島県安芸大田町恐羅漢山)、都市近傍山岳地域2地点(徳島県三好市アザミ峠、愛媛県四国中央市翠波峰)、都市域1地点(愛媛県新居浜市滝の宮)において21試料の採取を行った。 冬季湿性沈着試料について固相抽出法を用いてPbの濃縮を行い、Pb同位体(204、206、207、208)の存在量を測定した。Pb発生源の候補として石炭飛灰、黄砂エアロゾルのPb同位体比を併せて測定し、また中国都市大気エアロゾルのPb同位体比文献値との比較を行った。山岳地域の冬季湿性沈着中のPb同位体比は中国の都市大気と近い値を示し、山岳地域における大気中Pbは長距離輸送物質由来であることが示された。夏季湿性沈着試料については、Pb濃度が低濃度(最小0.01ppb)であるため改良した固相抽出法を用いてPbの濃縮を行い、Pb同位体を測定した。Pb同位体比と後方流跡線の解析結果から、山岳地域の降雨中のPbは中国からの長距離輸送由来であることが示された。一方都市域においては日本国内の発生源からの影響が示された。四国における夏季湿性沈着中のPbについて長距離輸送の寄与を示す観測例は少なく、希少な現象を捕捉することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により十分な試料採取が行えなかったが、2021年度は研究計画書に記載していた通り、試料採取不調時の代替案として夏季の湿性沈着試料採取を実施した。そのためエアロゾルの発生源解析に十分な試料を確保できており、研究の進捗は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
西日本では2020、2021年と少雪の気象状態が続いていることから、夏季降雨試料を採取して試料数の確保を行う方針を継続する。 2021年度は基本的な感染症対策を行った上での四国外の遠距離試料採取は広島県恐羅漢山にて行うことができた。2022年度も同様の方策で試料採取を行う。
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Causes of Carryover |
令和4年1月17日から3月23日までの期間において、新型コロナ感染症の感染拡大している地域への移動自粛が求められたため、予定していた兵庫、京都、広島を含む四国以外の地域での試料採取が実施できなかった。そのため試料採取に伴う旅費、研究協力者への謝金、試料採取に必要な物品費が使用されなかったため次年度使用額が生じた。 次年度以降、降雨試料を採取することで、試料採取に伴う旅費、謝金、物品費(降雨サンプラーの作成を含む)として令和4年度分と併せて使用する計画である。
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Research Products
(2 results)