2020 Fiscal Year Research-status Report
フィールドワークでも利用可能な錯体を使った安価なフッ化物イオンセンサーの開発
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20K05589
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
外山 真理 大阪電気通信大学, 工学部, 特任講師 (90373018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茶山 健二 甲南大学, 理工学部, 教授 (10188493)
長尾 憲治 明治大学, 理工学部, 専任教授 (60245800)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コバルト錯体 / ルテニウム錯体 / フッ化物イオン / 水素結合 / アミノ基 / 呈色 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は①フィールドワークで使用可能で、②現在使用されている希土類より安価なルテニウムやコバルト錯体を用い、フッ化物イオンとの反応が肉眼でも判定可能な呈色反応を示す新規錯体のデザイン・合成・評価をすることが目的である。 ルテニウム錯体では研究計画書に記載したように、計画書を作成した時点で、錯体のデザイン、同定、フッ化物イオンと呈色反応の確認まで研究が進んでおり、2021年度はこれらの再現性の確認などが検討課題であった。しかし、合成の再現性の確認に至らなかった。ただし、合成した錯体とフッ化物イオンの反応を19F-NMRで追跡する実験を実施した。その結果、フッ化物イオンと錯体の相互作用はこの装置で確認されなかった。これは、錯体中のアミノ基により水素結合で補足されたフッ化物イオンの環境が、補足前と大きく変化していないことを示唆する。 コバルト錯体では、錯体に対して3~4等量のフッ化物イオンが検出できる錯体を合成することを研究目的とした。申請時に合成していた錯体[Co(CO3)(Hdpa)2](OTf)(Hdpa = di-2-pyridylamine, OTf- = CF3SO3-)でもフッ化物イオンとの呈色反応が確認できており、これを原料にして更に多くのフッ化物イオンを検出できる錯体の合成を計画した。申請時に予備実験として既知の類似化合物[Co(CO3)(bpy)2](OTf)(bpy = 2,2'-bipyridine)を原料として次の錯体合成ルートの検討を行った。初年度はそれに倣い目的錯体の合成と、原料錯体の合成収率の向上を狙って研究を行った。その結果、予備実験で用いた既知錯体よりも、我々の錯体の方が溶液内で不安定であり、予定の方法では中間体合成の過程で錯体が分解することがわかった。更に、合成収率の向上にも至っていない。これは錯体の溶液中での不安定性にも要因があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本申請課題は、大まかに①「新規化合物の合成(実験室での作業)」、②「その同定(実験室での作業)」、③「フッ化物イオンの検出剤としての評価(実験室での作業)」、④「研究結果の検討・まとめ(デスクワーク)」に分類され、初年度は“実験室での作業”が主となる。しかし、以下の理由で“実験室での作業”が可能な時間を、計画時よりも大きく削減せざるを得なかったため、研究の進行が遅れる結果となった。 第一に、2020年度4月1日付で申請者が、所属先を異動したため、2020年度は実験室の立ち上げから研究を始める必要であった。第二に、2019年度末からのコロナ対策のため実験室での作業が新年度に入ってすぐに行えなかった。具体的には、2020年度4月はコロナ対応の第1回緊急事態宣言に従い極力在宅ワークを行った。そのため、実験室での作業ができなかった。更に、2020年5月以降後、「遠隔講義」が始まり、その授業準備にこれまで面接授業の約4倍の時間が必要となり、研究時間を圧迫したため、研究環境の整備が想定より遅れることとなった。結果として、異動先での研究環境が整ったのが、2020年度の7月末であり、研究計画時に想定していたより研究の着手が約4か月遅くなった。また、後期も一部の講義は「遠隔」がつづき、一部は「遠隔と面接の併用」となった。併用の場合、遠隔講義用の録画作業と面接講義の2回の講義を行う必要が生じ、それが研究時間を圧迫した。 加えて、2020年度はコロナ対策のため、大学での作業時間可能時間の短縮が推奨されたことも遅延の原因である。 更に、本研究は研究代表者の研究室所属学生の支援を予定していたが、所属先の異動とコロナ対応のため、学生の支援が受けられなくなったことも、遅延の一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度で研究環境は整えられ、主研究者の研究室に学生も配属されたので、学生の支援を受けながら、ルテニウム錯体の研究の再現性の確認を行い、投稿論文としてまとめることを目的として進める。ただし、コロナ対応のため、ワクチン接種前の学生の支援は計画時の30%程度として見積もることとする。 コバルト錯体は、これまでとは違う合成ルートでの合成を行う。具体的には、原料を[Co(CO3)(Hdpa)2](OTf)からcis-[CoCl2(Hdpa)2](NO3)に変更し、これに、フッ化物イオンと反応することがわかっているキレート配位子(Hdpa or H2pia)の導入を行う。今回の原料は、類似化合物である既知のcis-[CoCl2(bpy)2](NO3)の合成を参考に行う。ただし、このルートでも我々の錯体の場合、先行研究例のある錯体よりも不安定である可能性はある。しかし、このルートの場合、先行研究より加水分解反応で塩化物イオンが比較的容易に脱離することが期待されるため、反応中間体を分解を防ぐ温和な条件で合成できると期待している。 もし、この合成ルートでも目的の錯体合成に至らない場合、キレート配位子を、六員キレート環を形成するHdpaから、bpyと同じ五員キレート環を形成するH2piaにかえて[Co(CO3)(H2pia)2](OTf)錯体を合成する。H2pia配位子は、Hdpa配位子と同様に金属に配位した際にフッ化物イオンと呈色反応を示すこと、更に、Hdpaの2倍のフッ化物イオンの検出が可能であることがルテニウム錯体での先行研究でわかっているものである。しかし、このH2pia配位子は非対称型配位子のため、合成の際に幾何異性体の混合物が生じる可能性が考えられる。幾何異性体の混合物が得られた場合、その混合比の再現性と分離、そして指示薬としての評価について慎重に検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
2020年度の研究が遅れたため、消耗品(特にルテニウム錯体の研究に関する化学薬品)の使用量が予定よりも少なかったためである。この分は2021年度以降の研究で消耗品費(化学薬品、ガラス器具など)と論文作成費(英文校閲費、投稿費など)として使用する予定である。
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